一般的に「頭がいい人」と聞くと、知識が豊富な人や勉強ができる人などを思い浮かべるだろう。しかし、ビジネスシーンで成果を出すうえでは、多くの知識を持っているだけでは十分ではない。東証プライム上場企業社長の木下勝寿氏は著書『地頭スイッチ』で、「頭のよさ」には大きく分けて「知頭(ちあたま)」と「地頭」という2つの働きがあると語る。両者の具体的な違いと、仕事を進める際の特徴について、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏が木下氏に伺った。(構成/ダイヤモンド社・井黒考信)
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そもそも「頭がいい」には「知頭」と「地頭」がある?
――木下さんは本の中で、地頭とは異なる頭の働かせ方として「知頭(ちあたま)」という言葉を紹介されています。この「知頭」と「地頭」の違いを教えてください。
木下勝寿(以下、木下):いわゆる「頭がいい」と言われる人は2種類あると考えています。
1つが「知頭がいい人」です。文字通り「知識の頭」を指しており、たくさんの情報を蓄積している状態です。知頭がいいだけでも、暗記を中心としたテストでは高い点数を取れますし、良い大学に行ける場合もあるでしょう。
もう1つが「地頭がいい人」です。これは物事を思考したり理解したりするための頭を指します。たとえば、「〇〇のやり方は△△だ」と教わったとします。このとき、答えだけを覚えるのではなく、「なぜ、このやり方か」という理由まで理解しようとするのが地頭の特徴です。
つまり、知頭とは「すでにある答えを探すための頭」と言えます。答えが分かれば、同じようなことが起きたときにも対応できます。ところが、「どうやってその答えを出すのか」まで理解していないので、経験したことのない問題に直面すると対応できなくなる。
一方の地頭は、「〇〇のやり方は△△だ」という答えだけではなく、その背後にある「なぜなら」までを理解していきます。「問いA → 因果関係α → 答え1」という構造で物事を理解するので、初めて直面する問題でも対応できるようになるんです。
――私の知人にゲーム好きな人がいます。ゲームを始める前から攻略サイトを見る人もいれば、自分で攻略法を探しながらプレイする人もいます。どちらもゲームを楽しんでいることには変わりありません。ただ、最短ルートや全アイテムを回収する方法を最初から知って進めたい人と、自分で試行錯誤しながら攻略したい人がいる。これは「知頭」と「地頭」の違いに少し似ている気がしました。
木下:たしかに似ていると思います。ゲームに限った話ではありませんが、何かを自分で作り出すことに喜びを感じる人もいれば、正解を当てることに喜びを感じる人もいます。ひいては、「創造する喜び」を持っているかどうか、と言ってもいいかもしれません。
「知頭」は自分で正解を作り出すというよりも、すでに存在する正解を探す発想です。情報や経験をたくさん持っているほど、正解にたどり着きやすくなる。要するに、「答えを知っているか、知らないか」という発想で、「答えそのものを生み出す」という考え方がありません。
技術に例えるなら、知頭は「検索エンジン」に近いと思います。ウェブ上のどこかにある答えを検索して探している。一方の地頭は「生成AI」に近い。持っている情報をもとに、その場で答えを作り出していく感覚です。
「答え」とは自ら作り出すもの
――そもそも世の中には「答えが存在しないこと」のほうが圧倒的に多いのではないかと思いました。
木下:それは、地頭で考える癖がついている人の発想です。知頭で考える人は、「答えはどこかにある」という前提で生きていることが多い。ですから、「答えを知らないからできない」「やったことがないからできない」となります。
たとえば、言語は考えても分からないものですよね。突然スペイン語を話せるようにはなりません。単語や文法など、知識として覚えなければならない部分があるからです。
スペイン人に道を尋ねる場面があるとします。知頭モードの人に「あの方に道を聞いてください」と言うと、「僕はスペイン語が話せないからできません」となる。そこで、「スペイン語を話す必要はないので、どうやって道を聞くか考えてください」と言っても、一生懸命スペイン語そのものを考え出そうとするでしょう。それでは無理がありますよね。
一方で地頭モードの人は、「目的は、この人から道を聞き出すことだ。では、どうすればいいだろう」と考えます。すると、身振り手振りで伝える、あるいはスマートフォンの地図アプリを見せて「ここへ行きたい」と示す、といった方法にたどり着きます。
これが、答えを自分で作り出すということです。
スペイン語そのものは考えても分かりません。でも、「どうすればコミュニケーションが成立するか」は考えられる。ここにこそ、「知頭」と「地頭」の思考回路の違いがあります。
(第3回に続く)
株式会社北の達人コーポレーション(東証プライム上場)代表取締役社長
神戸生まれ。大学在学中に学生企業を経験し、卒業後は株式会社リクルートで勤務。
2002年、eコマース企業「株式会社北の達人コーポレーション」設立。
独自のWEBマーケティングと管理会計による経営手法で東証プライム上場を成し遂げ、一代で時価総額1000億円企業に。
フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」を4度受賞。
東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」1位。日本国より紺綬褒章8回受章。
著書にベストセラーとなっている、『売上最小化、利益最大化の法則』『時間最短化、成果最大化の法則』『チームX』『「悩まない人」の考え方』(以上ダイヤモンド社)、『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』(実業之日本社)、『戦わずして売る技術』
(幻冬舎)などがある。






