慣れない仕事に取り組むとき、「他社がやっているから」「上司に言われたから」と、深く考えずに実行してしまった経験はないだろうか。しかし、その行動が本当に目的達成につながっているとは限らない。東証プライム上場企業社長の木下勝寿氏は著書『地頭スイッチ』の中で、「手段の目的化」の危険性を指摘している。地頭を働かせて仕事を進めるための考え方について、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏が、木下氏から話を聞いた。(構成/ダイヤモンド社・井黒考信)
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仕事には「Thinkタスク」と「Doタスク」がある
――「地頭」を働かせるきっかけとして、与えられた仕事が「Thinkタスク」なのか「Doタスク」なのかを考える、という興味深い分類が本書で紹介されていますね。
木下勝寿(以下、木下):「Thinkタスク」とは「目的を実現するために、どんな手段が最適なのか」を考えることです。対する「Doタスク」とは、「選んだ手段を目的に沿って実行する」ことを指します。
たとえば「売上を上げましょう」という課題があったとします。このとき、どうやって売上を上げるのかを考えるのが「Thinkタスク」で、考えた方法を実行するのが「Doタスク」です。
――「Think」の部分を人に任せ続けたり、過去の事例に頼ってばかりいたりすると、おかしなことになりそうですね。
木下:私は部下に、「すぐに答えを聞いてはいけない。でも、情報は得ろ」と話しています。
事例には、「答えとして受け取る」場合と、「情報として受け取る」場合があります。「この会社は〇〇の方法でうまくいきました。だから、我々も〇〇をやるべきです」と受け取るのは、あまり賢いとは言えません。
一方で、複数の事例を集めて「この事例がうまくいった理由は何か」を考える。そして、それぞれを比較して共通点を見つけ、自社の場合はどうすれば良いかを検討する。そのために事例を聞くのは重要なことです。
――本書の中に、企業におけるInstagramの使い方の話もありましたよね。
木下:集客をしようとしたとき、他社がInstagramを運用してうまくいっていると、「うちもInstagramをやろう」となるケースは多いでしょう。ところが、実際に始めて思うように集客につながらない場合、「うちの商品とは相性が悪い」と、結果だけを見て判断してしまう。
本来考えなければいけないのは、「なぜ、その会社はうまくいったのか」という部分です。
実は、媒体そのものが良かったのではなく、告知していたキャンペーン内容が良かったのかもしれません。そうであれば、Instagramという手段だけを真似るのではなく、「なぜそのキャンペーンが成果につながったのか」という構造を理解する必要があります。さらに言えば、その構造さえ分かれば、告知媒体はXやFacebookでもいいかもしれません。
まずは目的から確認すること
――いきなり「Thinkタスク」を飛ばして「Doタスク」に進んでしまうのは、地頭を働かせていない状態であると自覚を持たなくちゃいけないですね。
木下:「手段の目的化」という言葉があります。本来は目的を達成するための手段だったはずが、いつの間にか「その手段をやること自体」が目的になってしまう、というものです。
だからこそ「そもそも、この手段は何のためにやるのか」「本来の目的は何なのか」と、立ち止まって考える姿勢が重要です。
――上司から仕事を振られたときに「何のためにやるんですか」と聞くと、「いいからやれよ」と嫌がられるのではないか、という不安もあります。
木下:もちろん確認の仕方には気をつけたほうがいいです。もし上司が、何の説明もせず頭ごなしに「やれ」と指示しているのであれば、それは上司側の問題です。
ただし、部下も「なぜやるんですか」と聞くのではなく、「より良い成果を出すために、最終的に達成したい目的を教えてください」と聞けば、受け取られ方は変わると思います。
一方で、上司の立場からすると、社会人経験が浅い若手に対しては、「目的まで説明しても、まだ理解できないだろう」と考えて、説明を省いてしまうこともあるかもしれません。
子どもを例にすると分かりやすいです。私自身、小さい頃はお菓子が大好きで、「ご飯を食べずに、お菓子だけで生きていく」と親に宣言したことがあります。親は「体に悪い」「栄養が取れない」と説明しました。でも私は、「昨日もお菓子だけ食べていたけど、何も問題なかった!」と答えるわけです。納得するまで説明しようとすると埒が明かないので、最後は「つべこべ言わずご飯を食べなさい!」となる。
上司と部下の関係でも、それに近いことはあるかもしれません。
――地頭を使うことは大事だが、上司とのコミュニケーションでは、目的を確認することが必ずしも歓迎されないケースもあるということですね。
木下:基本的に上司は「これが目的だから、この方法でやってほしい」と伝えるべきだと思います。目的を知らない人は、途中で何か問題が起きても、自分で軌道修正できません。そうなると、上司がずっと見張っていなければならなくなります。
たとえば、工場で作業している人が、自分が何を作っているのか分からないまま働いていたら、異常に気づきにくいですよね。でも、「これはテレビを作っている」と認識していれば、「この状態では、テレビとして問題があるのではないか」と途中で気づくこともあります。
つまり、仕事では「目的を共有すること」が重要なんです。
株式会社北の達人コーポレーション(東証プライム上場)代表取締役社長
神戸生まれ。大学在学中に学生企業を経験し、卒業後は株式会社リクルートで勤務。
2002年、eコマース企業「株式会社北の達人コーポレーション」設立。
独自のWEBマーケティングと管理会計による経営手法で東証プライム上場を成し遂げ、一代で時価総額1000億円企業に。
フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」を4度受賞。
東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」1位。日本国より紺綬褒章8回受章。
著書にベストセラーとなっている、『売上最小化、利益最大化の法則』『時間最短化、成果最大化の法則』『チームX』『「悩まない人」の考え方』(以上ダイヤモンド社)、『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』(実業之日本社)、『戦わずして売る技術』
(幻冬舎)などがある。






