「あの人は地頭がいい」と言われる人がいる一方、「地頭が悪い」と言われてしまう人もいる。「地頭の良さ」は生まれつきの能力であり、後天的に変えられるものではない。そう思っている人は多いのではないだろうか。しかし、東証プライム上場企業社長の木下勝寿氏は著書『地頭スイッチ』で、「地頭は生まれ持った脳のスペックではなく、スイッチの押し方さえ分かれば変えられる」と語る。では、「地頭のいい人」と「地頭の悪い人」は何が違うのか。『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏が、木下氏に話を聞いた。(構成/ダイヤモンド社・井黒考信)
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私はバカでもあり、同時に賢くもある
――以前お話を伺った本は、木下さんが代表を務める「北の達人コーポレーション」の商売や事業に関する内容が中心でした。今回はマーケティングではなく「地頭」がテーマですが、なぜ地頭を扱おうと思われたのでしょうか。
木下勝寿(以下、木下):これまで色々なジャンルの本を出版してきました。ありがたいことに比較的「地頭がいい」と言っていただけることもあります。ただ一方で、実はプライベートでは全く頭が回らないことが多いんです。
分かりやすい例ですと、遊びの計画を立てられない。「今度の土日どこかへ行こう」「ゴールデンウィークに何をしよう」といったことを考えようとしても、何をどうしていいのか分からない状態になっていて。その状態に気づいたときに「あれ……」と思いました。「これは確実に頭が悪い人の思考回路になっているな」と。
逆の人も見かけます。仕事ではあまり力を発揮できていないのに、遊びの計画を立てるのは上手な人がいます。他にも、テストの点数が高く、いわゆる高学歴なのに、仕事では成果を出せない人もいますよね。
つまり、地頭とは「生まれつきの能力」ではなく、人には地頭が「良いとき」と「悪いとき」という状態があるのではないか、と最近になって考えるようになりました。自分や周囲の人の思考回路を観察していくうちに、どうやら地頭を働かせるための「スイッチ」のようなものがあると気づき、それを1年半程かけて整理してまとめた本が『地頭スイッチ』です。
「やったことがないので分かりません」で止まる人
――「地頭」という言葉は定義しづらいですが、一般的には、IQのような生まれ持った頭の良さを指すことが多い気がします。地面の「地」と書くことからも、簡単には変えられない能力のようなニュアンスで捉えられているのではないでしょうか。木下さんが考える地頭は、それとは違うイメージでしょうか。
木下:全く違うわけではなく、ある程度はIQなども関係あると思います。本書では、地頭を「使っている状態」と「使っていない状態」に分けて考えています。
普段は地頭を使えていない人でも、地頭を働かせることで、ビジネスシーンや日常生活を問わず、よりよい成果を出せるようになるという話なんです。
私は、地頭がいい人と悪い人の違いは、「やったことがないことをできるかどうか」だと考えています。仕事でも、「これをやってみてください」と言われたときに、「やったことがないので分かりません」「経験がないので分かりません」「知らないからできません」と言ってしまう人は多いのではないでしょうか。
でも実際には、やったことがあるかどうかはそれほど関係ないんですよ。未経験の仕事でも、自分で考えながらスラスラと進められる人もいます。ここに、地頭を「使えている人」と「使えていない人」を分ける大きな差があると考えています。
――地頭は「能力」というよりも、自分で意識して働かせる「思考回路」のようなものなのでしょうか。
木下:私は「考え方の考え方」と言っています。地頭を使った考え方は意外とシンプルなんですよ。本書では、地頭を使っているときを「地頭モードになっている」と表現しています。僕自身、プライベートでは地頭を使えていないことが多い。
ですから、「地頭は良いか悪いか」ではなく、「地頭を使っているか、使っていないか」と考えた方が正しいのかもしれませんね。
――講師として企業から研修に呼ばれる機会があるのですが、人事や管理職の方から、最近の新人の傾向として「先に答えを教えてくれと言われることが増えた」という話をよく聞きます。上司としては、「考えることも仕事の一部なんだから試行錯誤してほしい」と思っている。ところが、それを非常に嫌がる若手社員が増えているというんです。これは、地頭を使えていない状態だと考えていいのでしょうか。
木下:人から答えだけをもらおうとするのは、最初から自分で考えることを放棄している状態とも言えます。これでは地頭が働かず、いつまで経っても指示を待つだけで、自分で答えを生み出せるようにはなりません。
(第2回に続く)
株式会社北の達人コーポレーション(東証プライム上場)代表取締役社長
神戸生まれ。大学在学中に学生企業を経験し、卒業後は株式会社リクルートで勤務。
2002年、eコマース企業「株式会社北の達人コーポレーション」設立。
独自のWEBマーケティングと管理会計による経営手法で東証プライム上場を成し遂げ、一代で時価総額1000億円企業に。
フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」を4度受賞。
東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」1位。日本国より紺綬褒章8回受章。
著書にベストセラーとなっている、『売上最小化、利益最大化の法則』『時間最短化、成果最大化の法則』『チームX』『「悩まない人」の考え方』(以上ダイヤモンド社)、『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』(実業之日本社)、『戦わずして売る技術』
(幻冬舎)などがある。






