経済財政諮問会議で示された、戦略17分野における
2040年度までの官民投資額の想定規模

AI・半導体に集まる官民投資、逆境の基盤産業こそ支援を厚く、危機管理投資の優先順位を再考せよ

 好況に沸くキオクシアホールディングスや、旧エルピーダメモリを買収した米マイクロンテクノロジーを目にして、じくじたる思いを抱く向きもあるだろう。なぜ日本企業や政府は、国内勢が主導権を握る形で半導体事業を維持できなかったのか、と。

 もちろん、これは後講釈に過ぎない。半導体産業は、歴史的に市況の振れが激しい産業である。経営のリスク管理を民間企業の自助努力に委ねるには、限界があることも自明である。

 だからこそ、政府による支援の在り方が問われる。

 そもそも政府の役割には、循環的な景気の浮沈をできる限り緩和することと、民間の自由競争に委ねるだけでは適正な資源配分が行われない「市場の失敗」への対応が含まれる。その代表格が安全保障に関わる産業だ。

 とはいえ、実際の政策判断は容易ではない。好況時に限って、当該産業への支援政策が支持を集めることは世の常だ。しかし、自由競争下で好況にある産業に政府が口を出せば、かえって弊害を生みかねない。

 真に求められる政策は、産業・経済・安全保障の礎でありながら、今まさに逆境に直面している産業に手を差し伸べることだ。これこそが、高市政権の掲げる「危機管理投資」の本懐でもあるだろう。

 日本政府は6月24日、戦略17分野における370兆円超に上る官民投資の詳細を公表した。これまでの議論に照らせば、次のような論点が浮かび上がる。

 まさしく今、好況を謳歌している「AI・半導体」に、政府が介入を強めることの意義は問われなければならない。

 また、安全保障上の意義が相対的に軽微とみられる「コンテンツ」分野の一角である「ゲーム」に対して、政府支援を強める意義も不明だ。

 一方、産業・経済・安全保障の礎でありながら、投資開発が遅れ、国内における内製化に課題を抱えている「デジタル・サイバーセキュリティ」「情報通信」「創薬・先端医療」への支援は、妥当な方向性であるように見受けられる。

 ただ、同様の課題を抱えているとみられる「航空・宇宙」「マテリアル」「資源・エネルギー安全保障・GX」などへのてこ入れは、相対的に手薄であるようにも映る。既存施策や別枠の政策投資との重複を勘案する必要はあるものの、「危機管理投資」の理念に照らせば、これらの分野こそ、より厚い支援の検討対象とされるべきではないか。

(みずほ証券エクイティ調査部 チーフエコノミスト 小林俊介)