日本成長戦略会議で発言する高市首相日本成長戦略会議で発言する高市首相 Photo:JIJI

高市政権は「責任ある積極財政」の柱として、官民370兆円規模の成長戦略投資計画を掲げる。しかし、日本企業の国内投資を阻んでいるのは資金不足ではなく、農業、医療・介護、ライドシェアなどに残る岩盤規制である。財政出動だけでは成長力は戻らない。(昭和女子大学総長顧問 八代尚宏)

370兆円投資計画だけでは
民間投資は国内に戻らない

 高市早苗首相は、「責任ある積極財政」の具体策として、官民を合わせた投資総額で370兆円規模を想定した成長戦略投資計画をまとめ、7月中旬の「骨太の方針」に盛り込む考えだ。

 これは日本経済の長期停滞の主因として民間企業の投資不足があり、これを補うために、政府が自ら民間投資の「呼び水」として戦略的な投資を行うべきという基本的な認識に基づいている。

 確かに、民間投資の低迷は日本経済停滞の主因のひとつだが、それは日本の経営者が内部留保をため込み、設備投資や賃上げに消極的なためであるという認識は必ずしも正しくない。

 現に、日本企業は、海外市場にはリスクを取って積極的に投資している。その海外からの収益は見かけ上、本社の内部留保に計上されるだけで、それは海外に再投資されている。

 日本企業が海外に投資しても国内市場に投資しないのは、期待収益率の内外格差が大きいためである。官の投資が増えても、それで企業が国内で新たに投資をする分野は限定されるだろう。

 政府の本来の役割は、個々の企業活動への関与よりも、民間企業の国内市場への投資を最大限に引き出すための環境整備にある。

 政府が個々の産業や企業に自ら投資をすることは、過去の財政投融資の事例でも税金の無駄遣いになりやすい。むしろ、民間企業の自由な投資の拡大を妨げている、さまざまな供給面の改革に取り組むべきである。

 労働力人口が傾向的に減少する下で、貴重な労働者の効率的な再配分には労働市場の流動化が不可欠だが、そのための解雇の金銭解決の導入等の規制改革はほとんど進んでいない。また、児童手当のバラマキ等の金銭給付だけではない、実効性ある少子化対策で中長期の成長期待を高めることも、本来の成長戦略である。