なぜ「社会的病名」として広まったのか?

では、なぜこの病名がこれほどよく使われ、目にすることが多いのでしょうか? それには歴史的な背景があります。かつてはメンタル・精神領域の病名を明確にすることが、一種の偏見や差別のようなものにつながるのではないかと懸念され、診断名をはっきりとつけづらい時代がありました。

しかし、会社や学校を休むためには診断書が必要です。そうした際に、少し状態をぼやかして書くための「社会的病名」として重宝されたのが、この自律神経失調症でした。

自律神経失調症は明確な定義がないため、診断書に書いても嘘にはなりません。実際に自律神経は存在し、そのバランスが乱れている状態を指すため、事実に反しているわけではないからです。そのため、社会的病名としてよく使われてきたという歴史があります。

決して「うさんくさい」ものではありません

また、精神的な病気とまではいかなくても、生活リズムの乱れなどで体調を崩すことはよくあります。そうした際に、「生活リズムを正して規則正しく過ごせば元気になりますよ」と、内科の先生などにとっても話題にしやすく、アドバイスしやすい領域であることも、この言葉が普及している理由の一つです。

今回私が皆さんにお伝えしたかったのは、自律神経失調症は少しややこしい立ち位置にある言葉ですが、決して「うさんくさいもの」ではないということです。明確な診断基準こそありませんが、自律神経の乱れ自体は実際に起こり得るものです。どうかその点をご理解いただければと思います。