戦争を正当化する
プロパガンダの10原則

 特定国の政府や国民が、何らかの理由で隣国との戦争を始めたいと考えた時、同調者を増やす目的で広められるのが、「外部の侵略者やその脅威から、わが国の平和を守るために戦う」という、単純な図式の物語です。

 これは、受け手の論理的思考よりも、むしろ感情や情緒の思考にアピールした方が効果的で、賛同した人間がさらに別の人間に広めていくという波及効果も期待できます。

 イギリスのアーサー・ポンソンビーという政治家は、1928年に上梓した著書『戦時の嘘』の中で、古今東西の権力者が新たな戦争を扇動したり、自国の行っている戦争を正当化する際に用いるプロパガンダ(政治宣伝)の手法を分析しました。

 彼は、そこに共通する「論理」の構造を読み解き、以下の10項目に整理しました。

(1)「われわれは戦争をしたくはない」
(2)「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
(3)「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
(4)「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」
(5)「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
(6)「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
(7)「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
(8)「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
(9)「われわれの大義は神聖なものである」
(10)「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」
(アンヌ・モレリ『戦争プロパガンダ10の法則』永田千奈訳、草思社)

 受け手を「戦争を受容する思考」へと誘う、この種の誘導的論理は、すでに始まった戦争を正当化する場合だけでなく、将来に起こりうる戦争を意図的に近づける、あるいは大きな「炎」となって燃え上がる前の「戦争の火種」をくすぶらせる時にも使われます。

 油断していると、新聞やテレビ、ネットなどが日々報じるニュースによって、あるいはSNSや動画投稿サイトの情報によって、こうした「戦争正当化の論理」が心の中に少しずつ刷り込まれる可能性があります。それが成功すれば、国民は政治指導者が掲げる戦争肯定の大義に疑問を抱かず、自発的に「外敵との戦い」に参加することになります。