中国・北京の中南海庭園を訪問した後、会場を後にするドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席(5月15日) Photo:China Pool/gettyimages
イラン情勢は停戦合意前に「逆戻り」!?
力による国際秩序形成が世界の流れに
中東情勢は、米国とイランの間で停戦・和平への協議開始の覚書が結ばれたが、イランの核開発や、ホルムズ海峡の航行回復などの問題で双方の溝は深いままだ。
7月に入ると、双方が相手側の停戦合意違反を挙げて、再び攻撃とそれへの報復を繰り返し、状況は停戦の合意以前に戻ったかのような状況だ。
トランプ米大統領もイランも覚書などなきがごとく、強硬な発言を繰り返し、交渉を有利に進めるための力の誇示に躊躇がない。
一方で、7月8日までトルコで開かれていた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は、米国の離脱という最悪の事態は回避されたが、トランプ大統領はNATO同盟国に対して「米国は多大の負担のもと平和の維持に貢献してきたのにイラン戦争では助けてくれなかった」と、不満を繰り返した。
欧州各国は、防衛費の増額に加え、防衛産業への投資や兵器の共同生産で、米国の企や雇用に利益が及ぶ枠組みを提示するなど、トランプ米国のつなぎ止めに動かざるを得なかった。
欧州諸国にしてみれば「法を逸脱した米国の武力行使に同盟国だから助けなければいけないのか」という反論はある。しかしロシアの脅威に抗していくうえで圧倒的な米国の力に依存せざるを得ない欧州は、トランプ大統領と決定的に対立し決裂するわけにはいかない。
だがその代償として、欧州も米国の力の路線に流れに乗らざるを得なくなっている。
国際秩序は大きく変わったと言わざるを得ない。その一つが、一つは「法の支配」から「力の支配」へと国際関係の基調の変化だ。
振り返れば、「力の支配」への変化は、ロシアのウクライナ侵略が大きな契機になった。
戦争を違法化してきた第2次世界大戦後の歴史を無視したロシアの力によるウクライナ領土の奪取の試みは、核兵器国の力の誇示だった。ガザ戦争もハマスによるテロに対するイスラエルの自衛の戦いという面はあるが、イスラエルのガザへの呵責(かしゃく)なき攻撃は、多数の民間人の犠牲を伴う国際人道法の明白な違反だ。
そして米国によるベネズエラへの軍事作戦、米国・イスラエルのイラン攻撃と、自衛戦争や集団的自衛権の行使を超えた国際法上正当化されない武力の行使が続いてきた。
トランプ米国で顕著なのは、力の行使の一方で「米国第一」や「ドンロー主義」のもと、同盟国も含めて米国のテリトリーと考える国や地域以外の安全保障への関与は弱めるという姿勢だ。
日本は「力の支配」という国際秩序の変化にどう対応するのか。難しいのは、こうした中で、かつての米ソ対立時代とは趣の異なる米中による「G2の世界」というもう一つの変化が徐々に浮き出ていることだ。







