「人を育てる」とはどういうことか。コンサルタントとして1万人以上のビジネスパーソンと向き合ってきた安達裕哉氏(『頭のいい人が話す前に考えていること』)が、いま最も知りたいと語るスキルがある。「ほめる」ことだ。評価を下すのではなく、相手を伸ばす――その道を極めたのが、手書きのメッセージで全国の小学生を励まし続けてきた進研ゼミの「赤ペン先生」である。本連載では、赤ペン先生の全国代表を務める佐村俊恵氏(『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた赤ペン先生のほめ方』)を安達氏が訪ね、その「ほめ方」の極意をひもといていく(全6回)。
(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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「ダラダラ」の裏に、何があるのか
安達裕哉(以下、安達) 前回まで、赤ペン先生流の「ほめ方」をうかがってきましたが、親としては、その手前で悩むことも多いんです。そもそも、なかなか勉強に取りかかってくれない子どもになんと声をかければいいのか。どうしても「いつまでダラダラしているんだ」とか「早く宿題をやりなさい」みたいな声のかけ方になってしまうんですよね。
佐村俊恵(以下、佐村) ありますよね。ただ、その「ダラダラしている」というとき、「なんでダラダラしているんだろう」と一度考えてみてほしいんです。大人だって、疲れているとダラダラしたくなりますよね。
安達 確かに、そうですね。
佐村 疲れているからダラダラしているのなら、そこは少し休ませてあげたい。そのうえで、やらなくてはいけないことがあるなら、たとえば「いつまでゆっくりする?」と一度声をかけて、「じゃあ、一回おやつにして、そこから始めようか」と。こちらからきっかけを与える言葉が必要かなと思います。
安達 頭ごなしに「やれ」ではなく、まず理由を見て、きっかけをつくる。これも結局、観察なんですね。
佐村 そうですね。「やらない」という行動の裏に何があるのか。ほかにやりたいことがあるのか、ただ疲れているのか。そこを見てあげることが先かなと思います。
正解の先にある、もう一つの「解き方」を見せる
安達 自分で「やる」と約束したのに、なかなか勉強を始めないときに、「なんでやらないのかな」とか「さっき『やる』って言ったのに、約束を破ったな」みたいな言い方をするのは、あまりよろしくないということでしょうか。
佐村 たとえばゲームにしても、今のゲームは一つクリアすると、次々にやりたくなる仕掛けがいっぱいあるじゃないですか。だから、ダラダラ遊んでしまうのはある意味当然なんです。そこは、時間やルールを決めることで対策するしかないと思います。勉強しているときは余計なものを見えないところに置く。ゲームは自分の部屋ではせず、必ずリビングでやる、とか。
安達 言葉でなんとかするより、環境のほうを変えてしまう。
佐村 そうです。勉強をやりたくない理由が「自分の部屋で一人でやるのでは気分が乗らない」ということなら、「じゃあ、リビングでやってみたら?」という声かけも効きます。隣で「お父さんも横で本を読むわ」と一緒にやると、それだけでやる気が上がったりもしますよ。
安達 言うだけでなく、親が自分でも手を動かすことが大事なんですね。一緒に時間を使う、というか。
佐村 そうですね。ただ、ずっと付きっきりで何から何まで声かけしましょうというわけではなくて、「この子はいま、こういう気持ちでいるんだよね」ということを、要所要所でちゃんと考えてあげることが大切かなと思います。
言葉で動かそうとするより「環境」を変える
安達 私が子どもによく言ってしまうのが「ちゃんと見直ししろよ」という言葉ですね。計算問題でケアレスミスがとても多くて、単位の書き忘れや、一問まるごと飛ばしていることも……。しつこく「見直せよ」と言っても、本人は「うんうん」と生返事で、本当にわかっているのかな?という感じなのですが、こういうときはどう声をかければいいんでしょうか?
佐村 そういうときは、まず「そのケアレスミスが、なぜ起きたのか」を一緒に考えてあげるといいと思います。理由は、だいたい二つに分かれるんですよ。一つは、早く終わらせたい一心で、ササッと済ませてしまった場合。もう一つは、本人は注意深くやったのに、それでも間違えてしまった場合。この見極めが大事です。
安達 なるほど。その二つはかなり状況が異なりますね。前者なら、前にうかがった「ゆっくり書こうね」という声かけが効きそうですね(第3回参照)。
佐村 まさに、それです。後者なら、「あなたならできるはずなのに、ちょっと間違えちゃったね。次は大丈夫だよ」という励ましが効く。同じミスでも、原因が違えば、かけるべき言葉も変わってきます。
安達 そもそも「見直し」って、子どもには難しいことなんでしょうか。
佐村 一度解いたものをもう一回、出す前に見るというのは、かなり高度な作業だと思っています。大人なら「ここは見直すべきだ」と判断できますが、子どものうちは、とにかく早く終わらせたい気持ちのほうが先に立つ。高校や大学の入学試験なら、全体を一度見直してから提出するのが必須になってきますが、小学生でそれをできる子はなかなかいないと思いますね。
安達 だとすると、いきなり全部を見直させるのは無理があるかもしれませんね。「1問だけでも見直してみよう」くらいから始めるといい?
佐村 見直しの「やり方」そのものを教えてあげることも大切です。たとえば足し算なら、答えから足した数を引けば、元の数に戻りますよね。そうやって論理的に確かめる方法を伝えてあげると、見直しの仕方がだんだん身についてきます。「見直そう」だけでは耳から耳へと抜けてしまうので、ここでも「何をするか」を具体的に伝えてあげる。そうすれば、できるお子さんは、本当にぐんと伸びますよ。



