競泳男子200メートル平泳ぎで世界新記録を樹立して優勝した大橋信選手競泳男子200メートル平泳ぎで世界新記録を樹立して優勝した大橋信選手をはじめ、日本人選手の活躍は目覚ましいが運営のミスが海外から批判を浴びている  Photo:JIJI

アジア大会で前代未聞のミスが連発し、世界中から大ブーイングを浴びています。メディアは「電通不在」を敗因に挙げますが、真の原因は別にありました。大会運営を崩壊させた、今の日本が抱える“致命的な弱点”とは?(ノンフィクションライター 窪田順生)

世界に広がった
「日本ヤバい」の衝撃

 日本で国際大会が開催されると、主催者側は「経済効果○○億円」と自画自賛して「日本の素晴らしさを世界に伝えることができた」などと胸を張るのがお約束だ。

 しかし、今回ばかりは逆に「日本のイメージ毀損効果」を試算したほうがいいのではないか。

 愛知・名古屋アジア大会の運営で「あり得ないミス」や不手際が連発、世界に「日本スゴイ」どころか「日本ヤバい」という不名誉なイメージを広めてしまっているからだ。

 その代表が「国名間違い」だ。9月18日、ホッケー男子の韓国戦で誤って北朝鮮の国歌が流れた。組織委員会は「あってはならないミス」とし韓国選手団に謝罪したが、舌の根も乾かぬうちに再びやらかす。

 9月20日、近代五種男子団体の表彰式で、金メダルを取った韓国を紹介する際、「リパブリック・オブ・チャイナ」と言った後にあわてて「コリア」と言い直したのである。

 もし中国や韓国で行われた国際大会で、日本代表の選手がこのような扱いを受けたら、ネットやSNSの怒りが爆発していることだろう。韓国国内でも当然、日本の大会運営へ痛烈な批判の声が上がっている。

 そこに加えて、選手の移動や宿泊環境に関しても大ブーイングが起きている。

 フランスのAFP通信は「選手からこれ以上は耐えられないという声が出ている」と報道。インドの主要紙タイムズ・オブ・インディアは、「(選手らが)主催者指定の宿泊施設を確保できなかった」と報じている。

 また、今大会で選手の宿泊所として導入された「コンテナハウス」も槍玉に上がっていて、韓国バスケットボール協会副会長は「宿泊環境だけを見れば、史上最悪のアジア大会だ」などとバッサリと切り捨てた。

 さらに、一部の競技場で提供されている食事のお粗末さを、韓国やタイの選手がSNSで批判しているが、組織委員会はこれらの食事について「組織委員会が提供したものではない」と釈明している。

 このような各国の指摘を受けて今、日本のメディアが盛んに触れ回っているのが「電通がいないから」というストーリーだ。

 大手広告代理店・電通は国際イベントの運営で、独自のノウハウを持っている。しかし、2021年東京五輪・パラリンピック時に代理店絡みの汚職が起きた影響で今回のアジア大会は辞退した(2023年9月28日 産経新聞)。

 そもそも電通が請け負う予定だったのは、スポンサー企業を集める代理店であって大会運営ではない。一方、競技会場の設営や運営を担ったイベント企業「GLevents」を問題視する論調もある。

 フランス・リヨンに本社を置き、世界20カ国以上で事業を展開する同社はドバイ万博の関連業務を受注した実績もあるが、大阪・関西万博では工事代金の未払いを主張する下請け企業から提訴され、係争中となっている。

 そういうネガティブイメージから大会前、全国商工団体連合会は組織委員会に対して、GLeventsを厳しく監督するように要請しており、一部メディアの中には「トラブル多発の背景に仏企業の起用」(9月22日 東スポ)と今回の機能不全と結びつけるような動きもある。

 ただ、個人的には今回のアジア大会を、仮に電通が受注していたところで、似たようなトラブルが多発していたと思っている。