子どもをほめるとき、思いのほか言葉のバリエーションがない……とお悩みではないだろうか。「すごいね!」「いいね!」といった声かけの効果は折り紙付きだが、そればかりではマンネリ化しかねない。だが朗報がある。通信教育「進研ゼミ」の「赤ペン先生」として20年以上、のべ8万枚以上の答案に向き合ってきた佐村俊恵さんによると、「ほめ言葉の語彙をいくらでも増やせるテクニック」があるという。
佐村さんの新刊『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』では、歴代の赤ペン先生が磨き上げてきた技術が惜しみなく明かされている。そのエッセンスを、ぜひ体得してほしい。
(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)

「語彙力がある子」の親が言っている口ぐせ・ベスト1Photo: Adobe Stock

低学年の子どもにも「感覚」で伝わる言葉を選ぶ

――子どもの作文をほめるのに、毎回「面白いね」「よく書けているね」と伝えているのですが、ワンパターンのせいか、子どもにも響いていない気がします……。

佐村俊恵氏(以下、佐村) もちろん、「面白いね」というストレートな感想でもお子さんはうれしいと思いますよ。

作文をほめるとき、私なら「読んでいてワクワクしたよ!」と伝えます。

「続きがどうなるか、ハラハラしたよ」「楽しそうな情景が浮かんで、ウキウキした気持ちになったよ」とか。

――ポイントは「ワクワク」「ハラハラ」「ドキドキ」でしょうか?

佐村 そうです。擬音語・擬態語――いわゆるオノマトペを使うことですね。

すると「読んだ人のイキイキとした感情」が伝わりやすくなります。特に低学年のお子さんは、まだ難しい言葉や理屈っぽい表現が心にストンと落ちにくいのですが、オノマトペなら感覚的に理解できます。

――「面白いね」と言われるよりも、オノマトペで「読み手の感情」を伝えられるほうが、子どもにとってはうれしい?

佐村 そう思います。

「ワクワクした」と言われれば、子どもは「自分の書いたものが、これだけお父さんやお母さんの心を動かしたんだ」という手ごたえを得られますよね。

この「誰かの心を動かした」という実感が、実はとても大事なんです。その感覚は、表現することそのものの喜びにもつながっていきます。「面白いね」では、なかなかここまでの実感は生まれません。

子どもは、大人が思う以上に敏感です。

読み手の心が本当に動いたのかどうか、言葉のはしばしから感じ取っています。だから「面白いね」だけだと、なんとなく表面だけでほめられているように感じてしまうかもしれない。せっかくほめているのに、それではもったいないですよね。

オノマトペなら、ほめ言葉の語彙は無限に増える

――たしかに、オノマトペを使うと「心からの言葉」に聞こえますよね。

佐村 だから、子どももうれしいのだと思います。

オノマトペを取り入れると、子どもに伝える感想の語彙は無限に広がります。感情や感覚を表す言葉は、日本語に本当にたくさんありますから。

子どもが成長してきたら、オノマトペだけでなく「胸がおどったよ」「手に汗にぎったよ」「心があたたかくなったよ」など、少しずつ表現力のある言い回しに広げていくのもおすすめです。

――親が使う言葉のバリエーションが、そのまま子どもに伝わっていくということですね。

佐村 まさにそうです。語彙が豊かなほど、子どもは自分の気持ちを豊かに表現できるようになりますし、他人の気持ちにも共感できるようになっていきます。

オノマトペにも流行がありますから、子どもの周りで使われている言葉を取り入れると、子どもとの距離がぐっと縮まります。たとえば以前、「うちのモモ(マルチーズ)かわいいよ」と書いてきてくれた子がいました。

そのとき私は「いいなあ。先生も昔、もふもふした犬を飼っていたよ」とお返事したんです。「もふもふ」という響きだけで、かわいい犬のイメージがありありと浮かびますよね。子どもと同じ感覚を共有したくて、この言葉を選びました。

語彙が尽きない親になる、日々の習慣

――日常の中で、親はどうやって言葉のストックを増やしていけばいいでしょうか。

佐村 普段から、子どもが喜びそうな表現にアンテナを張っておくといいですね。

私自身、小説などで「すてきだな」と思う言い回しを見つけたら、こまめにメモしています。テレビやマンガのセリフでも、心に残ったものはどんどんストックしておくと、いざというときスッと出てきますよ。

それから、自分が言われてうれしかった言葉を、そのまま子どもに伝えてみるのもおすすめです。言われた側もうれしいものですから。ぜひご家庭でも、さまざまな機会に、多彩な表現をシャワーのように子どもへ注いであげてください。