またもバブルの兆候:超割高なADRを買う米投資家Photo:Bloomberg/gettyimages

「この株は割高だ」「あの銘柄は高すぎる」「市場全体がバブルだ」と主張する弱気派を見つけるのは簡単だ。通常、そうした主張は意見の域を出ない。しかし、韓国テック市場で絶大な人気を誇る半導体大手 SKハイニックス の米国預託証券(ADR)に関しては、単なる意見では済まされない現実がある。

 SKハイニックスが今月上場したADRは大きな話題を呼んだ。このADRは、同社が韓国市場に上場している株式の10分の1に相当し、多少の手間で韓国上場株に転換できる。

 しかし、まともな判断力を持つ投資家であれば、転換しようとは思わないだろう。為替調整後でも、ADRは韓国上場株を大幅に上回る価格で推移しているからだ。

 これは、人工知能(AI)トレードの過熱ぶりを示す、さらなる兆候だ。

 SKハイニックスのADRは上場以降の2週間、韓国上場株に対するプレミアム(価格の上乗せ率)が16~51%の範囲で推移している。米国の投資家は、韓国上場株を売買してくれる証券会社を探す手間を省き、同社の株式をニューヨークで買える利便性と引き換えに、高い代償を払っている形だ。これは、半導体株全般、とりわけメモリー株に対して割高な価格を支払うことをいとわない姿勢の表れでもある。

 ADRプレミアムの肥大化は、市場では本来起こり得ない現象だ。例えば、理髪代やホテル代は、そのサービス自体を別の場所に運べないため、地域によって大きなばらつきが出たりする。しかし株式はバーチャルなものであり、瞬時に移動させられるため、重複上場株の間に大きな価格差が生じれば、通常は裁定取引業者が介入して利益を得る。

 問題は、韓国上場株とADRの間に安全な裁定取引の手法が存在しないことだ。ADRを韓国株に転換することは可能なものの、規制上の制約により、それを再びADRへ戻すことは容易ではなく、SKハイニックスの許可がなければ事実上不可能だ。