AI暴走リスクと中国競合の脅威、米政府に強まる警戒感Photo:Anna Moneymaker/gettyimages

 政策決定者が集まる米首都ワシントンで、人工知能(AI)を巡る混乱が広がっている。

 そして私たちはまさに今、AI界の主導権を握ろうともくろむ者たちがこの新技術の支配権を巡って繰り広げる激しい攻防を目撃している。

 米オープンAIが先週、同社の AIモデルがテスト中に隔離環境を突破 して他のIT企業のシステムをハッキングしたと明らかにしたことで、AI技術がSF映画の悪役さながらの暴走を起こす可能性があるという懸念が一気に現実味を帯びた。

 これに拍車をかけるように、 中国のAI競合他社が新たな無料のAIモデルを発表 した。こうしたAIモデルは、アンソロピックなどの米大手が多額の費用を投じて開発したモデルの学習成果を流用して 構築されたとの指摘がある 。これにより、米中間の地政学的な対立に新たな戦端が開かれた。

 トランプ米政権はすでに、大手AI研究所のモデルに対する監督強化を命じた6月2日付の 大統領令 に基づき、その実施体制の構築という期限に追われていた。この大統領令自体、AIシステムが急速に強力になっていることへの 恐怖心から発せられたもの だ。

 これほど短期間に懸念材料が相次いだことで、米政府には「何らかの措置を講じるべきだ」という圧力が一段と高まっている。しかし業界内では、拙速な対応がイノベーションを阻害したり、特定のプレーヤーのみを利したりするのではないかという懸念が広がっている。

 大手AI企業は長年にわたり、この強力な技術に歯止めをかけるための規制を自ら主体的に提言し、先手を打とうとしてきた。サイバーセキュリティー上の大惨事や生物兵器の脅威、その他の危険領域における破局的リスクを防ぐために規制が必要だと主張してきたのだ。

 こうした取り組みは当初、危機の予測を信じない人々から 嘲笑を買っていた 。しかし、技術が高度化するにつれ、彼らの提言は「競合となる新興零細企業を排除し、自社に都合の良いルールを確立する『規制の私物化』を狙ったものだ」という 批判に変わっていった 。