漫画家・かっぴー氏の著書『天才になれなかった全ての人へ 自分だけの武器が見つかる才能論』の刊行を記念し、映画監督/脚本家で著書『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』を上梓した長久允氏との対談イベントが、代官山蔦屋書店で開催されました。「才能の教室」と題して繰り広げられたイベントの模様を、全4回でお届けします。(文/大西志帆)

対談

計算高く作らないからこそ伝わるもの

かっぴー:では次の質問です。「何歳までなら間に合いますか?」。どうでしょう。

長久允(以下、長久):そうですね。例えば、やなせたかし先生がアンパンマン描いたのが50歳ぐらいとかを考えたり、僕も33とかで初めて映画作ってるし、マジで間に合うとかはない。むしろカードが溜まってくから、その人にしかできないものできていくはずだって心から思うんですけど、どう?

かっぴー:映画監督、脚本、漫画家、漫画原作者、この辺はないかなって。スポーツ選手とかは違うかもしれないけど、クリエイティブの仕事だったら、本当に年は関係ない。強みまであると思う。

長久:あとこれって、有名になるっていうことを置いておくとさ、スポーツでも「野球で手応えを感じる」だったら年齢って問題ない気がするんですよ。それで言うと、ものを作るときに、稼ぐ・有名になるということを優先事項に置かなくてもいいとは思うんです。本当にものを作るっていう行為の尊さって。っていうことは結構、どういう選択をしていくかっていうキーではあるかなっていう感じはします。

かっぴー:何が目的かですよね。

長久:うん。僕ももともと稼いでいくことを目的とせずに映画を作ってるから、作るべきと思うことを作るっていうスタイルではあったというか。

かっぴー:作んなきゃ死んじゃうって言ってたじゃないですか。

長久:私はね、そうです。

かっぴー:そこもやっぱりわかる。『左ききのエレン』を最初に読み切りで書いたときは、書かなきゃいけないっていうか、「中にあんのが気持ち悪くて出したかった」感じなんですよ。

自分の中にあるものを書く

かっぴー:長久さんは今も「作るべきと思うものを作る」状態ですか。

長久:今もそう。

かっぴー:へー、そうか。僕もわりかしそのタイプなんだけど、意外とそうじゃない人も多いんですよ。結構計算で描いてる人多くて。これがウケるからとか。編集者もそれを求めるし。

長久:かっぴーさん計算高く見られると思うけど。

かっぴー:めっちゃ見られる。

長久:全然違うと思う。

かっぴー:全然違うんですよ。代理店のコネでやってんのねみたいなこと言われたりするけど、会社辞めたらコネ一瞬で消滅しますからね?

長久:うんうんうん。

かっぴー:なんかそこは結構世間とのイメージとギャップがあるかな。本当に俺、結構パッション系だと思う。

長久:そうですよね、泥臭い、自分の中にあるものを描いているって感じしますね。

「才能の確認作業」の最後が映画だった

長久:映画をなぜチョイスしたかっていう話でいうと、僕はずっと音楽をやっていたんですね。でも、20歳で「あ、ダメだ、これ以上うまくなれない」って気づいちゃった。

かっぴー:うんうん。

長久:で、「この毎日10時間以上を練習していた熱量を何かに向けなければダメだ」って思って。ただ何に惹かれるかがわかんなかったんで、全部確認したんですよ。写真部に入ってみるとか、デザインやってみるとか、服作ってみるとか、落研でコント書いてみるとか、演劇のオーディションに参加してみるとか。でも、どれも全然しっくりこなくて。最後の選択肢が映画で、もうこれしかないから、もうこれってことにしようと思って。

かっぴー:へー、珍しい。

長久:なんでそんな追い込まれてたかわかんないんですけど。それぐらい音楽が大事だったからなんですけどね。結局、そのままさらに10数年過ぎるんだが、映画は一番合ってるなとは感じてたんですよ。だからやっぱ、確認した方がいいんじゃないかと思う。

かっぴー:それで言うと僕はまだ脚本を書いたことはないんですよね。映画は大好きだから、脚本も書いてみようかな。

長久:書いて。

かっぴー:書く。今日お話しして、一番奥にあるやつを出したいなと思いました。

長久:ぜひ。試した方がいいですよ。やっぱ試さないと試せないから。当たり前なんだけど。やらないとやっぱね、わかんないし。やる前にこれが向いてるのであるってわかることってないんじゃないかと。

かっぴー:本当にそう思う。

下手って言われてもへっちゃら

長久:だからそれはある種、今日の才能の教室みたいな話ですけど、やる前からどのゾーンっていうのはやっぱわかんないんじゃないかと思う。だからもうDO。DOしかないっていう気はしてるっていう。そのためにも、心閉じないことが大事かも。髪伸ばすとかね。やっぱスーツとか着ると心閉じちゃう。

かっぴー:僕も素の状態でいようと思ってます。常に。あとさっきおっしゃってた、その自分より上手にできる人はいるけどっていうのがすごい刺さりましたね。なんか9割の漫画上手すぎるなって思ってて。こんぐらい下手で、なんか丸出しの漫画あっても良くない? って思って描いてます。

長久:それはでも一緒かも。上手に作ることを目的としてないのはやっぱりあるんですかね。

かっぴー:うん。だから下手って言われても全然へっちゃら。