「あの人、昔はすごかったらしいよ」。職場でそんなふうに言われているベテランはいないだろうか。それなのに、今は思うような成果を出せていない。すると、「時代についていけなくなった」「もう能力が落ちた」と考えられがちだ。しかし、昔は本当に活躍していたのなら、別の見方もできる。画家・かっぴー氏の著書『天才になれなかった全ての人へ 自分だけの武器が見つかる才能論』には、そのヒントが隠されている。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

職場の「昔はすごかった人」が活躍できない本当の理由Photo: Adobe Stock

昔は「天才状態」に入っていたのかもしれない

漫画家・かっぴー氏の著書『天才になれなかった全ての人へ 自分だけの武器が見つかる才能論』では、「天才状態」に入る条件として、次の3つが示されている。

1「能力を100%発揮できている」
2「自然な状態である」
3「価値を生んでいる」

ここで重要なのは、「天才」は固定された人間の種類ではなく「状態」だということだ。ずっと天才でいられるわけではないし、反対に、今は成果を出せていない人でも、かつて天才状態だった可能性はある。

たとえば、20年前には新規顧客を次々と開拓し、社内でもトップクラスの成績を残していた営業マンがいたとする。それなら、「なぜ今はダメなのか」だけを見るのではなく、「なぜ当時はあれほどハマっていたのか」を考えてみるべきだろう。

そのころ、何が自分にハマっていた?

思い出したいのは、昔の成功体験だけではない。そのときの「状況」だ。

どんな仕事をしていたのか。どんな立場だったのか。誰と働いていたのか。会社は何を評価していたのか。そして、世の中ではどんな能力が求められていたのか。

時代が変われば、同じカードでも価値は変わる。たとえば、かつては「足で稼ぐ」「大量に電話する」といったカードが大きな成果につながった仕事でも、現在は「データを読む」「仕組み化する」といった別のカードが求められているかもしれない。会社の評価基準も、顧客も、働き方も変わっていく。

昔と同じことをしているのに成果が出ないなら、本人だけが変わったとは限らない。周囲のルールが変わった可能性もある。

「昔のカード」だけで戦っていないか

さらに、自分自身のカードも変化している。若いころには「体力」「勢い」「かわいげ」といったカードが使えたかもしれない。それが年齢とともに使いにくくなる一方で、「経験」「判断力」「人脈」「信頼」「人を育てる力」といった新しいカードが増えていることもある。

昔に大きな成功体験があるほど、当時の戦い方から離れにくい。「これで結果を出してきた」という自信があるからだ。

今のカードを、もう一度洗い出す

しかし、手札が変わっているのに、昔と同じカードばかり切っていたら苦しくなる。問題は能力がなくなったことではなく、「今の自分」のカードをまだ使えていないことなのかもしれない。

成果を出せなくなったベテランほど、一度、昔を振り返ってみるといい。「自分が最も成果を出していたのはいつか」「そのころ、なぜ自分はハマっていたのか」。仕事、立場、人間関係、評価基準、時代状況まで含めて考えてみてほしい。

昔の自分を再現しようとするのではなく、今の自分がハマる条件を探し直す。ベテランになったからこそ、もう一度「自分のベテラン」になる必要があるのだ。