オデーサ港はウクライナが穀物を輸出する際の重要な玄関口PHOTO: SERHII KOROVAYNY FOR WSJ
【キーウ(ウクライナ)】世界の穀物貿易の拠点であり、ウクライナ経済の生命線でもある黒海が、この夏一変した。ロシアによる攻撃が続き、最近ではウクライナによる攻撃も加わり、黒海の双方の端で船舶や港湾インフラが炎上、世界全体にとっても不吉な兆候となっている。
11日夜、ウクライナはロシアの黒海沿岸の港湾都市ノボロシースクにミサイルとドローンによる攻撃を実施し、「防空陣地、埠頭(ふとう)、港湾インフラ」を攻撃したとウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は述べた。
ロシアは、ウクライナ軍がロシア占領下のクリミア半島の港に停泊していたロシア艦船に攻撃を繰り返したため、黒海艦隊の大部分を戦争の早い段階でノボロシースクに移転させていた。「占領艦隊とそれを支えるすべてのインフラは、ロシアの侵略が続く限り安全ではない」とゼレンスキー氏はソーシャルメディアに投稿した。
今回の夜間の空爆は、ウクライナがロシアの黒海沿岸を攻撃する能力を高めていることを示す一連の攻撃の最新事例であり、ロシアの砲撃と相まって、世界で最も重要な海上回廊の一つで商業活動そのものを停止する恐れが出ている。ロシアとウクライナは世界有数の穀物輸出国であり、両国の小麦は多くの貧しい国々に不可欠な食料源となっている。
黒海はロシア・ウクライナ双方の輸出をボスポラス海峡を通じて世界へと運ぶ貿易ルートであり、これまでもこの戦争における重要な駆け引きの手段となってきた。ロシアは2023年にウクライナの港を繰り返し攻撃し、穀物輸出を遅延させた経緯がある。
今回の違いは、ウクライナ側も反撃できるようになった点だ。
両国が互いの経済的な急所を突こうとする中で生じる世界への「巻き添え被害」は、甚大なものとなる可能性がある。
ウクライナ政府は、黒海のさらに東にあるロシアの海上輸送ルートに対して独自の作戦を展開している。そこではウクライナのドローンが、ロシアの港を発着する石油タンカーを追跡している。米トランプ政権は、米国とイランの紛争に起因するエネルギー価格の上昇を懸念し、ウクライナにロシア以外の船舶への攻撃を控えるよう促している。
この数週間でウクライナのドローン部隊は、クリミア半島の東側に位置するアゾフ海で ロシアの「影の船団」 に属する船舶134隻への攻撃を主張し、黒海本体でもさらに84隻を攻撃したとしている。ウクライナ・ドローン部隊のロバート・ブロブディ司令官は、これらの攻撃について、ロシア占領下のクリミア半島を占領軍が住めない場所にするための大規模な戦略の一環だと説明した。
攻撃は非常に効果的であり、タンカーやノボロシースク港周辺の施設への攻撃がカスピ海パイプライン・コンソーシアム(CPC)の操業を圧迫していることで、他国にも緊張が走っている。CPCは世界の石油の約2%を運搬しており、その多くはカザフスタン産で、株主には シェブロン やエクソンモービルといった米大手石油企業が名を連ねている。
穀物貿易は戦時下のウクライナにとって経済的な生命線となってきたが、ロシアは今やそれを断ち切ろうとしている。ウクライナのオデーサ州にある主要3港と、そこに接近を図る国際船舶に対する最近の集中攻撃がその証拠だ。アナリストらは、この緊張激化がアフリカなどの影響を受けやすい国々で食料価格を押し上げる可能性があると指摘している。








