回路基板の自動組み立て装置を製造する東莞ICTテクノロジーの従業員回路基板の自動組み立て装置を製造する東莞ICTテクノロジーの従業員

【広東省東莞(中国)】香港にほど近い東莞市は数十年前、安価な玩具・靴・衣料品・電子機器を大量生産して中国を世界の工場へと変貌させ、同国の経済発展をけん引した。

 同市を中心に今、新たな産業転換が起きている。中国が「工場の工場」として台頭しつつあるのだ。中国はもはや低付加価値の消費財を生産するだけの国ではなく、半導体・精密機械・ロボットアームといった、世界の製造業を支える高付加価値の中間財・資本財の輸出を増やしている。

「かつてはドイツと日本が先端製造業をリードしていた」。中国最大級の産業用ロボット・機械メーカー、広東拓斯達科技(トップスター)の国際事業担当副社長、フランク・ジャン氏はそう話す。「しかし中国の技術は追いついたと確信している。中国は多くの製品で既に両国を超えている」

 中国が世界のサプライチェーン(供給網)への支配を広げた結果、同国の輸出システムはさらに強力になり、完成品に課されることが多い関税への耐性を高めている。マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)が中国の公式税関データを分析したところ、今年1~5月の中国の輸出は中間財と資本財がそれぞれ前年同期比25%増、12%増となったが、消費財は4%増にとどまった。

 こうした変化が、欧州連合(EU)や日本、韓国など先端製造業経済の競争優位性を脅かしている。これらの国・地域で化学品や機械、電池などの工業製品を製造する企業は、かつては顧客として中国の工場に依存していたが、今や中国勢が国内外の市場で手ごわいライバルとなっている。ドイツでは数十年ぶりに、先端資本財の対中貿易で輸入が輸出を上回っている。

 中国の変化を受けて、世界各地で警戒感が高まっている。EUは「チャイナショック2.0」に対する新たな保護措置を検討している。韓国と日本は今年、人工知能(AI)関連の輸出急増による恩恵を受けているものの、その陰では多くの産業分野が世界市場でシェアを失いつつある。

 米国の ジェイビル 、韓国の サムスン電子 、台湾の 鴻海精密工業(フォックスコン) 、中国の華為(ファーウェイ)と寧徳時代新能源科技(CATL)――。東莞市にあるトップスター本社では、世界的な顧客企業のロゴがスクリーンに映し出されている。同社は50カ国以上に1万5000社を超える顧客を持つという。

 トップスターの事業は好調だ。メキシコやブラジル、ベトナムでの需要急増を受けて、2025年の国外売上高は10%近く増加し、約9200万ドル(約146億円)に達した。2026年1-3月期(第1四半期)には、産業用ロボット部門とコンピューター制御工作機械部門の売上高がそれぞれ前年同期比81%増、63%増となった。同社は1-6月期(上半期)の利益について、前年同期比で3倍超になると見込んでいる。