ワインの本場といえば、フランスやイタリアを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、世界最古のワイン産地は西欧ではない。今から約8000年も前にワイン造りが始まり、「ワイン発祥の地」として現在世界中の専門家から注目を集めている意外な国があるのだ。ワインの教養が身につく新刊『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』から、日本人が意外と知らないワインの歴史と、その始まりの地について紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
ワイン発祥の地は「フランス」ではない
ワインの歴史について語るとき、多くの人はヨーロッパ中心の歴史観にとらわれがちだ。
しかし、ワインが生まれたのはフランスなどの西欧ではない。
ワインの専門家である水上彩は、著書『ワインの世界地図』の中で、ワインの世界的な起源について次のように述べている。
世界最古のワイン発祥の地とされる国です。
日本ではかつてロシア語由来の「グルジア」と呼ばれていましたが、2008年の軍事衝突を機にロシアとの決別を示すため、自国をロシア語名で呼ぶ国々に対し、英語読みの「ジョージア」へ改めるよう働きかけた歴史を持ちます。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
ヨーロッパの東の果て、旧ソ連の構成国でもあったジョージアこそが、ワイン文化の源流なのだ。
約8000年前の痕跡が残る「始まりの地」
ジョージアが「世界最古」と呼ばれる理由は、単なる伝承だけではない。
著者は、その科学的な根拠について詳しく解説している。
首都トビリシの国立博物館にある紀元前6000年頃(約8000年前)の土器の破片からは、ぶどうの種とともに、アルコール発酵を裏付けるワイン特有の成分(酒石酸)が検出されました。
隣国のアルメニアにあるアレニ洞窟からも、紀元前4100年頃(約6100年前)の、世界最古となるワイナリー遺跡(醸造設備)が発見されています。
現時点でワイン醸造に関する最古の考古学的な証拠がそろっているのは、コーカサス一帯です。ワイン界のアダムとイブが暮らした、いわば聖地なのです。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
紀元前6000年というはるか昔から、この地ではすでにワインが醸造されていた。
フランスの有名なワイン産地が形成されるずっと前から、コーカサス地方には高度な醸造技術が存在していたのである。
どの家庭も当たり前にワインを造る国
では、そんな歴史ある「始まりの地」における現在のワイン文化は、どのようなものなのだろうか。
著者が実際に現地を訪れた際の驚きの光景を、次のように振り返っている。
驚くことに当時のジョージアでは、ワインの自家醸造はおろか、販売にすら特別な免許がいりませんでした。日本の梅仕事のように、どの家庭も当たり前に「うちのワイン」を仕込み、「やっぱりうちのが一番!」と誇っているのです。
――『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より
一部の愛好家や専門家だけが高尚に楽しむのではなく、日々の生活の中に当たり前のようにワインが根付いている。
「日本人が知らない教養」として世界の歴史を俯瞰したとき、本当のワイン文化の豊かさとは、こうした日常の風景の中にこそあるのかもしれない。
ワインジャーナリスト/コラムニスト
1986年生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。お茶の水女子大学理学部卒業後、大手通信企業を経てワイン業界へ。世界最大のワイン教育機関WSETが認定する、国内でも取得者の少ない最難関資格「Level 4 Diploma」を保持。
『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニストとして、ワインをビジネスや文化の視点から紐解く一方、国内外の産地を精力的に訪問し、ストーリーを丁寧に紡ぐ執筆活動を展開。スーパーで手に入るデイリーワインからハレの日の1本まで等しく愛し、初心者目線の解説に定評がある。また、茶道や着物を日常に取り入れたライフスタイルを実践し、ワインと日本の美意識を交差させた独自の楽しみ方を発信している。趣味はアルゼンチンタンゴ。








