良かれと思って部下に告げた「もっと積極的に取り組んでほしい」「協調性が足りない」という言葉が、実は部下からの不信感を煽り、現代の労働環境ではハラスメントとして糾弾されるリスクを孕んでいることに、50代の管理職は気づいていません。主観による曖昧な評価こそが、組織を腐らせる諸悪の根源です。今回は、書籍『リーダーの仮面』をベースに、ベテラン管理職が陥りやすい「主観評価というハラスメント」と、その解決策を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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「協調性」や「積極性」という主観評価の暴力
50代の管理職の多くは、昭和や平成初期の「背中を見て育つ」マネジメントに慣れ親しんできました。
そのため、期末の評価面談において、部下に対して次のような指導を平気で行ってしまいます。
「お前はもっと積極的に発言したほうがいい」
「チームの調和を考えて、協調性を持って行動しなさい」
「最近、仕事に対するやる気や熱意が感じられないぞ」
これらの指導は、現代の組織運営においては「一発アウト」です。
なぜなら、「積極性」「協調性」「熱意」といった言葉には、客観的な定義が一切存在しないからです。
上司の主観によって「やる気がある、ない」を判断される環境は、部下からすれば不公平極まりありません。
「お気に入りのAくんは『熱意がある』と評価され、自分は『ない』とされる」という不信感を生み、最悪の場合、上司の好き嫌いによる「精神的嫌がらせ(ハラスメント)」として告発されることになります。
評価項目はシンプルに
『数値化の鬼』という本で私は、このような曖昧な「定性的評価」を数値っぽく偽装した評価制度の弊害と、その劇的な解決策について、次のように論じています。
「積極性」「判断力」「協調性」
「計画性」「創意工夫力」
「コミュニケーション力」……
などの項目が設定されていると思います。
それらを「1~5」の5段階で感覚的に選ぶような評価じゃないでしょうか。
しかし、考えてみてください。
積極性やコミュニケーション力といった曖昧なことを常日頃からすべて考えている人なんて、この世にいるのでしょうか。
「○○力」という概念は、無理やり数字っぽく見せかけた不自然なものです。
それなのに、評価項目が10項目や20項目、中には30項目を超える評価制度を用意しているところもあります。
識学流の目標は、評価項目はシンプルに「5項目以下」に絞ることを推奨しています。
――『数値化の鬼』より
部下を迷わせず、上司も感情に流されないようにするためには、評価項目から曖昧な「○○力」を徹底的に排除しなければなりません。
評価基準は、誰が見ても1ミリの誤解も生じない「客観的な数値」のみで、かつ「5つ以内」に絞るべきです。
例えば、「新規獲得件数」「期限遵守率」「タスクの完了数」など、数字として数えられる事実だけで目標を設定する。これを行うことで、評価面談から「上司の主観」や「えこひいき」が完全に消滅します。
「結果」だけを淡々と評価せよ
「やる気」や「プロセスでの頑張り」を評価に含めないことは、一見すると冷徹に思えるかもしれません。
しかし、これこそが最も公平で、部下にストレスを与えない仕組みです。
評価基準が完全に数値化されていれば、未達の部下も「自分の行動量が足りなかった」と納得せざるを得ず、感情論で会社や上司を恨むことはなくなります。
50代の管理職は、自分の主観を「指導」と勘違いして押し付けるのを、今すぐやめましょう。
リーダーの仮面をかぶり、無駄な評価項目をすべて削ぎ落とし、5つ以下の数値基準だけで部下の「結果」を淡々と評価する。
この客観的な姿勢を貫くことこそが、部下の自立と成長を促し、ハラスメントの個人リスクを完全に回避するための、現代のリーダーが守るべき絶対のルールなのです。




