「部下を伸ばす上司」と「やる気を奪う上司」の決定的な違いとは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA
「部下はしかるよりも、ほめて伸ばす」が定説になりました。部下の機嫌を損ねないように、ハラスメントにも気を付ける管理職は多いと思います。一方で、ほめ言葉が部下のやる気をかえって奪うケースも珍しくありません。なぜでしょうか?部下のやる気に火をつける伝え方のコツを紹介します。(アチーブメント取締役営業本部長 橋本拓也)
営業トップ目前のエース社員
上司がほめても冷たい反応、なぜ?
私がマネジャーとして部下との関わり方に悩んでいたころの実話です。当時、私のチームには急成長中の若手社員がいました。営業成績をめきめきと上げていて、周囲からも「シゴデキ(仕事がデキる)だね」などと評判になっていました。
彼には、現状に満足せずさらに上を目指してほしい――。この思いから私は「もう少しでランキング1位になれるぞ!」と声をかけて応援していました。
しかし、彼の反応は芳しくありません。むしろ私となんとなく距離を置いているようでした。
戸惑いました。「1位になれるぞ」と上司に期待されて、喜ばない営業マンなんているわけがない。私はそう思い込んでいたのです。
結論から言うと、私が完全に間違っていました。彼にとって社内ランキング1位は、モチベーションアップにはつながらなかった。むしろ、「ああ、この上司は自分のことを数字の結果でしか評価しない人なんだな」と思わせてしまいました。
なぜ、こうしたすれ違いが起きるのか。原因をたどると、私は「ほめる」ことで相手を「コントロール」しようとしていたに過ぎないのだと気づきました。
「ほめる」が、いつの間にか
コントロールになってしまう理由
部下を持つ人の多くが、心のどこかで「外から刺激を与えれば、人は動くし、変えられる」と信じているのではないでしょうか。一方でそれは、「部下を自分の思い通りに動かしたい」という支配欲が根底にあるのです。
人は、外からの刺激に反応して動くのではなく、心の内にある「基本的欲求」を満たそうとして自ら行動を選びます(選択理論心理学)。基本的欲求とは、私たちが遺伝子レベルで持つ5つの欲求、「生存」「愛・所属」「力」「自由」「楽しみ」です。
これらの欲求を満たすために、「これが手に入ったら嬉しい」「こんなふうになりたい」といったイメージを集めた、アルバムのようなものを人は持っています。これを「上質世界(願望)」と呼びます。
私が若手エースに差し出した「1位」というイメージ。これは、私のアルバムには貼ってありましたが、彼のアルバムには貼られていなかったというわけです。
上司が部下に価値観を押しつけてコントロールしようとすると、「この人、自分のこと全然わかってないな」と部下は感じます。さらに、上司を自分の上質世界から追い出そうとします。これが、心の距離が広がる瞬間です。
ほめる行為でもっと注意すべことがあります。「上司が絶対やってはいけないことランキング」があれば、ワースト1位といっても過言ではありません。







