「ちゃんと言葉にしたのに、なぜか伝わらない」。そんな経験はないでしょうか。実は、問題は話し方のうまさではないのかもしれません。言葉だけですべてを伝えようとすること自体に、そもそも無理があるのです。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「言葉が出てこない」はおかしいことではない
私たちは子どもの頃から、当たり前のように言葉を使っています。
友人と雑談する。仕事の相談をする。メールを書く。
だから、「言葉を使う」という行為そのものを難しいとは思いません。
ところが、ある瞬間、急に言葉が出てこなくなることがあります。
でも、時々こう思います。
「うーん、言葉を使うのって意外と難しいぞ」と。
日常会話はふつうにできる。
でもなんか、時々、言葉が、うまく、えーと、出てこないことがあるのです。
初対面の人と2人きりになったとき。
急に自分の考えを聞かれたとき。
気まずい沈黙……。うーん、何を話したらいいのやら。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
こうなると、「自分は口下手だから」と考えてしまいます。
そして、「もっと言語化力を鍛えなければ」と思う。
でも、本当に足りないのは「言葉」なのでしょうか?
言葉にしたのに「伝わらない」
さらに厄介なのは、なんとか言葉が出てきたとしても、それで問題が解決するわけではないことです。
人と会うといつも、「この人とは何を話したらいいんだ?」と悩んできました。
がんばって話してみると、今度は別の問題に直面します。
話が相手にうまく伝わらないのです。
言ったことが、相手に誤解されてしまうこともあります。
「そういう意味で言ったんじゃないんだけどな」とモヤモヤすることばかり。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは誰にでも起こります。
「そんなつもりじゃなかった」
「そういう意味で言ったんじゃない」
「なんでそんな受け取り方をするんだろう」
こちらは正しく言葉を選んだつもりなのに、相手には別の意味で届いてしまう。
ここで、「もっと正確な言葉を使おう」と考えると、さらに言葉を増やすことになります。
でも、説明を増やせば必ず伝わるとは限りません。
むしろ話が長くなって、さらにわかりにくくなることさえあります。
「同じ言葉=同じ意味」ではない
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。
それは、私たちが言葉を信用しすぎているからです。
だから、自分の言ったことが相手に正しく伝わると思ってしまう。
相手が使った言葉を、正しく理解できたと思ってしまう。
ここに言葉の落とし穴があります。
みんなが自由に使える。
だからこそ、伝わらないのです。
だからこそ、誤解してしまうのです。
そこで、私がみなさんに知ってもらいたいのが、「言葉以外のコミュニケーション」です。
言葉から離れて、言葉以外のコミュニケーションに目を向けてほしいのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
たとえば、「ちゃんと準備しておいて」と言ったとします。
自分は「資料を読み込み、質問を想定し、回答まで用意する」という意味で言った。
でも、相手は「必要な資料を持っていけばいい」と受け取った。
同じ「準備」という言葉を使っているのに、頭の中に浮かんでいるものが違うのです。
だから、言葉だけで伝えようとするとすれちがいます。
伝わらなければ、いったん「言葉」から離れる
では、どうすればいいのでしょうか。
言葉が伝わらないときに、さらに言葉を重ねるのではなく、いったん言葉から離れてみるのです。
写真を見せる。図を描く。実物を見せる。身振りで示す。
具体的な場面を思い浮かべてもらう。
「こういうことです」と指をさせるものを用意する。
そうすると、お互いが同じものを見ながら話せるようになります。
「言葉で伝わらないなら、もっと上手に言葉にしなければ」
そう思いがちですが、逆かもしれません。
言葉だけでどうにかしようとするから、苦しくなる。
口下手だからといって、無理にペラペラ話せる人になる必要はありません。
言葉がうまく伝わらないなら、言葉以外の方法を使ってみる。
「伝える=話す」だけではないと気づけば、コミュニケーションはもっとラクになるのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




