「自分に何ができるのか、うまく説明できない」。そんな口下手な人ほど、仕事では損をしがちです。しかし、無理に話し上手になる必要はありません。言葉で伝えられないなら、「見せる」という方法があるのです。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

口下手で「仕事ができない人」が、一瞬で生まれ変わった方法とは?

「何ができますか?」に答えられない

 仕事では、自分に何ができるのかを説明しなければならない場面があります。

 就職活動の面接でも、営業でも、フリーランスの仕事でも同じです。

「あなたは何ができますか?」

 そう聞かれたとき、スラスラと自分を売り込める人もいれば、うまく言葉が出てこない人もいます。

 後者は、それだけで「仕事ができなさそう」と判断されてしまうことがあります。

私はイラストレーターです。
仕事をはじめてから、10年以上が経ちました。
ざっと数えてみたところ、少なくとも200冊以上の本でイラストを描きました。
イラストレーターになる前は、フリーのライターを志していました。
ライターの仕事をもらうためには、何が書けるかを言葉で説明する必要がありました。
「どんな文章を書いているんですか?」
そう質問されても、私はうまく答えられませんでした。
だから仕事ももらえず、あっという間に廃業。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここで重要なのは、「文章が書けなかった」とは書いていないことです。

「何が書けるのかを説明できなかった」のです。

 仕事の能力と、それを言葉で説明する能力は、本来は別物です。

 ところが仕事では、しばしば後者によって前者まで判断されます。

「説明できない=できない」と思われてしまうのです。

「説明する」のをやめたら仕事が増えた

 ところが、イラストレーターを目指したことで状況は変わります。

節操もなく、私は次にイラストレーターを目指しはじめました。
今度も何が描けるかを言葉で説明する必要がある……?
と思いきや、実際はそうではありませんでした。
「どんな絵を描いてるんですか?」と聞かれたら、「こんな絵です」と、パッと見せることができるのです。
言葉で説明しなくても、絵を見てもらうだけ。
すると、絵を見てくれた人がいろいろなことを言ってくれます。
「なんだか暗い絵が多いね」とか「あの仕事に使えそうな雰囲気ですね」とか。
感想がいっぱい出てくるのです。
そこで出てきた言葉をヒントにしてまた絵を描く。
そしてまた見てもらう。
この繰り返しで、仕事が少しずつ増えていきました。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 やったことは、とてもシンプルです。

「説明する」から「見せる」に変えた。たったそれだけです。

 しかも面白いのは、見せることによって、相手のほうから言葉が出てきたことです。
 自分で「私はこういうイラストレーターです」と完璧に言語化する必要はありません。

 まず作品を見せる。
 すると相手が、「こういう感じなんですね」「この仕事に合いそうですね」と、勝手に解釈してくれる。

 そこからコミュニケーションが始まるのです。

仕事ができる人ほど「見せる」

 これはイラストレーターだけの話ではありません。

 たとえば会議で新しい企画を提案するときも、「こんなサービスを考えています」と延々説明するより、簡単な試作品を見せたほうが早いことがあります。

 資料について相談するときも、「こういうイメージなんです」と口頭で説明し続けるより、たたき台を1枚つくったほうが伝わる。

「何をしたいのかわからない」と言われる人ほど、言葉だけで相手の頭の中に完成形をつくってもらおうとしているのかもしれません。

 だったら、自分から「コレです」と見せればいいのです。

自分で説明できなくてもいい

「どんな文章が書けますか?」
この質問に答えられなかった私は廃業。
「どんな絵が描けますか?」
この質問に、私はいまでもうまく答えられません。
でも、絵が答えてくれます。
絵が、私の代わりにコミュニケーションをしてくれるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 口下手な人は、「もっと上手に説明できるようにならなければ」と考えます。

 もちろん、説明する力を鍛えることも大切です。
 でも、その前に考えてみてください。

 そもそも、それは言葉で説明する必要があるのでしょうか。

 企画書を見せる。試作品をつくる。図にする。写真を見せる。実際にやってみせる。
 仕事には、「言葉以外の答え」がたくさんあります。
 口下手だから仕事ができないのではありません。

 言葉だけで仕事をしようとするから、自分の能力が相手に伝わらないことがある。

 だったら、言葉が出てこないときは「コレです」と見せてしまう。
 それだけで、仕事のコミュニケーションは驚くほどラクになるのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。