突然、意見を求められて「何も言葉が出てこない」。そんなとき、無理に言語化しようとすると、ますます頭は真っ白になります。実は、言葉を出したければ、いったん「言葉」から離れたほうがいいのです。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「見る」だけでコミュニケーションは始まっている
私たちは「コミュニケーション=言葉」だと思いがちです。
何かを伝えるなら、話さなければいけない。自分の考えを説明するなら、言語化しなければいけない。
でも、実際には言葉がなくても、私たちはたくさんの情報を受け取っています。
ビジュアルが勝手に、見た人とコミュニケーションしているのです。
私は仕事でイラストを描くとき、絵を見る人がどんな気持ちになるかを想像します。
たとえば、本のカバーイラスト。
本のカバーは本の顔。読者が一番はじめに見るところです。
その本をパッと目にした人がどう思うか。
「わかる……」なのか、「そうなりたい!」なのか。
「なんだ?」と違和感を持ってほしいときもあります。
見ただけで、何かが伝わる。そんな絵を描きたいのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
本屋で本を見た瞬間に「面白そう」と思う。
料理を見て「おいしそう」と感じる。
初めて入った店を見渡して「落ち着くな」と思う。
誰かに説明されなくても、目に入ってきたものが私たちの感情や思考を動かしています。
つまり、「見る」という行為そのものが、すでにコミュニケーションなのです。
「言葉が出ない=言語化能力が低い」ではない
ここに、口下手な人が見落としやすいポイントがあります。
相手に何かを伝える方法は、言葉以外にもたくさんあります。
それなのに、言葉だけにこだわっているのはちょっともったいない。
頭の中ではいろんなことを考えている。
でも、いざ聞かれたときには言葉が出てこない。
それは、「自分に言語化能力がないからだ」と思っていないでしょうか?
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
たとえば、会議で突然、「この企画についてどう思いますか?」と聞かれる。
「えーっと……」
何か思っているはずなのに、うまく言葉にならない。
すると、「自分は頭の回転が遅い」「もっと言語化力を鍛えなければ」と考えてしまいます。
でも、本当にそうでしょうか。
もしかすると、言葉だけを手がかりにして考えようとしているから、言葉が出てこないのかもしれません。
言葉が出なければ、まず「見る」
そこで使えるのが、「見る」という方法です。
ひとつは「言語化をがんばること」。
そして、もうひとつは、「言葉以外の世界を目で見ること」です。
何かを見ると、見えたものが刺激になって、言葉が浮かびやすくなります。
料理を見て、「美味しそう!」と言葉が出てくる。単純に言えばそんなことです。
思ったとおりに言葉が出てこないならなおさら。
まず見ることから始めればいいのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは仕事でも使えます。
企画について言葉が出てこないなら、企画書をもう一度見る。
商品の感想を求められたら、商品そのものを見る。
デザインについて聞かれたら、実物を眺めながら考える。
すると、「ここ、ちょっとわかりにくいですね」「この部分は好きです」「前の案のほうがよかった気がします」と、目に入ったものに引っ張られて、言葉が出てきます。
何もないところから言葉をひねり出そうとする必要はありません。
見えるものを、言葉を引き出すための「きっかけ」にすればいいのです。
「言語化する前に見る」が最強の切り抜け方
口下手な人ほど、「ちゃんと話さなければ」と思います。
だから、頭の中だけで答えをつくろうとしてしまう。
しかし、言葉が出てこないなら、視線を外に向けてみる。
写真でも、資料でも、商品でも、目の前の景色でもかまいません。
何かを見れば、「これ、いいな」「ここが変だな」「前に見たものと似ているな」と、思考が動きはじめます。
そして、その感覚にあとから言葉をつければいい。
言葉が出てこないときほど、言葉を探さない。まず、見る。
それだけで、「何も思いつかない」という状態から抜け出しやすくなるのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




