「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

40歳をすぎても「成長しない人」
年齢を重ねれば、人は自然に成長するのでしょうか。
残念ながら、そうとは限りません。
20代より40代のほうが経験は豊富です。
失敗も成功も多く経験しているでしょう。
それなのに、年齢を重ねるほど柔軟になる人もいれば、逆に頑固になる人もいます。
その違いはどこにあるのでしょうか。
『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その答えを「ラベル」という考え方で説明しています。
成長を止めるのは「経験不足」ではない
本書では、こんなエピソードが紹介されています。
20代のころ、遅刻ばかりしていた私に「遅刻してヘラヘラしてんじゃないよ」とピシッと言ってくれた人。食事を奢ってもらったあと、何も連絡しなかったら「お礼くらい言えよ」と叱ってくれた人。
いまは「叱ってもらってよかった」と思いますが、当時はムカついていました。
これが、人間の感情の複雑なところです。
叱られたという事実に対して私は最初、「ムカつく」というラベルを貼りました。
でも、十年以上経つと、「よかった」というラベルをそこに貼っている。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
興味深いのは、過去の出来事そのものは何も変わっていないことです。
叱られたという事実は同じ。
変わったのは、その出来事に貼るラベルです。
成長とは、過去の出来事を別の角度から見られるようになることでもあります。
成長しない人は「最初の感情」に縛られる
本書では続いてこう語られています。
でも、貼られるラベルは、いつも複数の可能性があります。
というか、同時に2つのラベルを貼ってもいいのです。
「ムカつく、でもよかった」と。
一度貼ったラベルは剥がすのが難しい。だったら、その上からもう1枚貼ればいいのです。
一度は「悲しい」と思ったとしても、あとで「晴れやか」を貼ってもいい。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここに成長の本質があります。
成長しない人は、最初に貼ったラベルを絶対視します。
「あの上司は嫌な人だった」
「あの会社は最悪だった」
「あの経験は無駄だった」
そう決めたら、その後もずっと同じ解釈を続ける。
一方で成長する人は違います。
「あのときは嫌だった」
「でも、あれがあったから今がある」
というように、別のラベルを貼り直していくのです。
人生は「再解釈」でできている
本書では最後にこう語られています。
「ムカつくって言ったよね? だったら一生ムカついてろ」ということになってしまいます。ラベルに未来の自分の感情まで決められる筋合いはありません。
本当はもっといろんな感情があったのに、一度貼ったラベルに振り回されてしまう。
同時に複数のラベルを貼っていいことに気づけば、最初に感じた自分の感情を否定しないまま、新しい考えを取り入れる柔軟さを手に入れることができます。
「悲しかった。でも成長の機会だった」
「ムカついた。嫌だった。でも自分には必要なことだった」
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
この考え方は仕事にもそのまま当てはまります。
失敗した。評価されなかった。異動になった。降格した。
その瞬間はネガティブな感情しか出てこないかもしれません。
しかし、数年後に振り返ったとき、まったく違う意味を持つことがあります。
実際、多くの成長は後から振り返って初めて理解できるものです。
成長する人は「ラベルを貼り替える」
『言語化だけじゃ伝わんない』は、言葉の扱い方だけでなく、人生との向き合い方も教えてくれます。
40歳を過ぎても成長しない人の特徴は、経験が少ないことではありません。
一度貼ったラベルを変えられないことです。
「私はこういう人間だ」
「あいつはこういう人だ」
「あの出来事は最悪だった」
そう決めた瞬間、思考は止まります。
一方で成長し続ける人は、過去を何度でも見直します。
「嫌だった。でも学びになった」
「失敗だった。でも必要だった」
「悔しかった。でも成長できた」
ひとつの事実に複数のラベルを貼れる人は、経験から学び続けることができます。
人生を変えるのは、新しい経験だけではありません。
過去の経験に、新しい意味を与える力なのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








