「言語化にモヤモヤする」
「即答よりじっくり考えるほうが大事」
「口下手のままでもいいじゃない」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「自分のことを棚にあげる人」の特徴
「なんでそんな解釈になるの?」
「普通わかるでしょ」
仕事をしていると、こういう場面はよくあります。
教えた側は、「ちゃんと伝えた」と思っている。
一方、教わった側は、「そんなの聞いてない」と感じている。
すると、お互いに「相手が悪い」と思いはじめる。
『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、こうしたコミュニケーションのズレについて、とてもリアルなエピソードが語られています。
人は「言われていないこと」を理解できない
本書では、制作会社に勤めていた頃の話が紹介されています。
雑誌に載せるPR広告をつくっている会社です。
そこで私は、人生ではじめて取引先との「打ち合わせ」に参加することになりました。
先輩から「打ち合わせに行くから一緒に行くよ」と言われた私は「わかりました」と返事をして、ノートとペンをカバンに入れて先輩について行きました。
すると、取引先の会社に向かっている途中で、先輩から突然、「名刺、持ってるよね?」と聞かれたのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より
新人の頃は、こういうことが本当に起きます。
先輩からすると、「打ち合わせなら名刺を持っていくのは当たり前」。
ですが、経験がない側には、その当たり前が存在していないのです。
人は「常識」を前提に怒ってしまう
本書では、その後、こう続きます。
「打ち合わせ」だからノートとペンだけを持ってきたのです。
「忘れました」と答えると、先輩はものすごく嫌な顔になり、「名刺忘れるとか、人としてどうなの?」と吐き捨てるように言いました。
私は先輩のこの一言にカチンときて、「そこまで言う?」と反感を覚えました。
そして、「習ってないんだから、仕方ないじゃん」と思ったのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より
これは、かなりリアルな「すれ違い」です。
先輩は、「そんなこともわからないのか」と思っている。
新人は、「教わってないのに責めるな」と思っている。
つまり、お互いが「自分の見えている世界」を前提にしているのです。
「普通わかる」は、ほぼ幻想である
本書では、最後にこう整理されています。
これが、コミュニケーションの厄介なところです。
自分の解釈に問題があったときも、自分が悪いとはすぐに思えないのです。
逆の立場に置き換えても同じです。
新人に仕事を教えたことがあれば、「そんなふうに解釈するんだ?」と驚いたことがあるのではないでしょうか。
「プレゼンの準備をしておいて」と言ったのに、資料を持ってきただけだったとか。
「打ち合わせ」「準備」という言葉は、難しい言葉ではありません。
そこで先輩が新人の未熟さに怒るのは、当たり前のことだと言えます。
そのとき新人が「そこまで言う?」と反論していたら、いつまでたっても仕事ができるようにはなりません。
そんな事情とは無関係に、お互いに相手に問題があるというバトルは続きます。
わかったと言ってわかりあえたはずなのに、実はわかっていなかった。これを「すれちがい」と呼ぶのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』より
ここが、この本の核心です。
人は、自分の「普通」を前提に相手を見ています。
だから、「そんなの当たり前だろ」と思ってしまう。
ですが実際には、その当たり前は共有されていないことが多い。
つまり、コミュニケーションで本当に怖いのは、「難しい言葉」ではありません。
「簡単すぎる言葉」なのです。
みんな「自分の世界」を生きている
『言語化だけじゃ伝わんない』は、「人間関係の衝突の多くは、“悪意”ではなく“解釈のズレ”から起きている」と教えてくれます。
だから、本当に大事なのは、「相手が悪い」と決めつける前に、「この人にはどう見えているんだろう?」を考えることです。
もちろん、社会に出れば、常識を学ぶ努力は必要です。
ですが同時に、「自分の常識は、相手にとっての常識ではない」という視点も必要になる。
その両方がないと、人はいつまでも「自分のことを棚にあげて、相手を非難する人」のままなのかもしれません。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








