「言語化だけがすべてではない」「絵を描くように考えるのが大事」「口下手のままでも伝え方は上手になれる」など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

【そういうことか!】「しゃべりやすい人」「話しにくい人」2つに分かれてしまう驚きの理由とは?

「しゃべりやすい人」と「話しにくい人」

「この人とは、なぜか話しやすい」
「逆に、この人とは会話が続かない」

 そんな経験は誰にでもあるはずです。

 しかも不思議なのは、相手が「いい人かどうか」とは関係ないことです
 性格が悪いわけでもない。嫌いなわけでもない。なのに、なぜか会話が噛み合わない。

言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その理由を非常にシンプルに説明しています。

 キーワードは、「コレ」「ソレ」「アレ」です

「コレ」が通じる相手とは距離が近い

 本書では、こんな説明があります。

人間関係において、一体なにが距離感をつくり出しているのでしょうか?
それは、「コレ」「ソレ」「アレ」です。
「コレ」「ソレ」「アレ」と言って、どれくらい相手に通じるか
その多さや度合いによって、距離感が変わります。
「コレ」と言って、「ああコレね」と応じてくれる人は距離感が近い。
「なにそれ?」と聞き返されるなら、その人との距離は遠いということです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは驚くほど本質的です。
 つまり、人間関係の近さとは、「どれだけ説明を省略できるか」なのです。

 長年の友人とは、「あの件さ」で通じます。

 でも、初対面の相手には、背景から順番に説明しなければならない。
 この「説明コスト」の差が、会話のラクさを大きく左右しています

「共有しているもの」が距離を縮める

 本書では、さらに具体例が続きます。

会話の途中に、単語をど忘れしてしまったとき、「アレだよ、アレ!」と言う。仲の良い相手なら、ちょっとしたヒントで「あー、アレな、わかるよ」と応じてくれます。
同窓会で久しぶりに会った同級生も、最初はちょっと距離感がありますが、「あの先生」や「あの事件」を思い出していくと、徐々に距離感が近づいていきます。
電車に乗ると、カップルが並んで1台のスマホを一緒に見ていることがあります。
「コレ見てよ」と言って面白かった動画を共有しあうのも、それを見てもらいさえすれば、面白さが伝わると思うからです。
炎上している投稿を見せて、「コレ、どう思う?」と聞く。
距離感が近い人同士なら、それを見ていきなり、どう思うかを語り出せるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 つまり、「しゃべりやすい人」とは、単純に話術が合う人ではありません。
 共有している記憶や感覚が多い人なのです

 だから、昔からの友人とは久しぶりでもすぐ打ち解けられる。
 説明しなくても通じる「共通データ」が大量にあるからです。

人は「説明コスト」が高いと疲れる

 逆に、距離感が遠い相手とはどうなるのでしょうか。

 本書では、こんな会話が紹介されています。

でも、距離感が遠い人は、それを見ても「なにそれ?」と聞いてきます。
「昨日ラジオ聴いた?」と尋ねても、「どのラジオ?」と返されてしまいます。
「オードリーのだよ!」
「オードリーって何? ヘップバーン? タン?」
話す側は、どこから話せばいいかわかりません。
聞く側も、相手が何を言っているかわからないので、お互いにストレスです。
話す側は早く感想を伝えたいのに、まずは「それがなんなのか」をゼロから説明しないといけないのです。
この説明の手間が、さらに人と人の距離感を生み出してしまいます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、かなりリアルです。会話がしんどい相手というのは、「相性が悪い」というより、前提の共有量が少ないのです。

 だから、会話するたびに大量の説明が必要になる。
 その積み重ねが、「なんとなく話しにくい」という感覚につながっていきます

「会話力」だけで人間関係は決まらない

 最近は、「コミュ力」や「言語化能力」が重視される時代です。
 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』では、「人間関係はもっと感覚的なものだ」と教えてくれます。

 人は、「うまく話せる人」と仲良くなるわけではありません。
「説明しなくても通じる人」に安心するのです

 だから、「会話が苦手だ」と悩む前に、「共有できるものがあるか」を考えてみる
 それだけでも、人との距離感は大きく変わるのかもしれません。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。