ケンカしても後腐れない人と、ずっと引きずってしまう人。その差は一体どこにあるのか?
ある日突然、会社を辞め、家を売り、無線機も持たずに航海に出た夫婦。自作した船で出港したが、ガラパゴス沖で突如クジラに襲撃され海に投げ出された。118日間、生死をさまよう最上級のスリルと人生模様を堪能できる全米ベストセラー『極限の漂流118日間』をもとに、「ケンカしても後腐れのない人の共通点」についてライター照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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向こうのトーンを深読みしてしまう瞬間
コロナ禍でリモートワークに移行してから、チャットで送る言葉をかなり気遣うようになった。
対面なら、表情や声の調子で感情が伝わるが、文字だけになると冷たく見えることがある。そっけなく見えないか、責めているように読まれないか。送信前に何度も読み返していた。
それでも、送ったあとで「あの言い方は少し強かったかもしれない」と気になることがある。相手からの返事が遅いと、向こうのトーンをつい深読みしてしまう。
ケンカしても後腐れない人の共通点とは?
極地旅行家の角幡唯介氏が「漂流者だけが知る、あらゆる人間性がはぎとられた先にある生き物としての生。それに圧倒される」と評した『極限の漂流118日間』(ソフィー・エルムハースト著/村井章子訳)には、こんなシーンがある。
相手を傷つけるような言葉をぶつけ合い、マラリンが泣き出すこともあった。
だが長引くことはない。ふたりはすぐに冷静になり、なぜあんなひどいことを言ってしまったのか、(中略)話し合う。そして互いに謝るのだった。
――『極限の漂流118日間』より
悪天候が続き、体力が削られていく。雨でラフトは濡れ続け、飲み水や食料にも問題が起きる。
生き延びるだけで精一杯の時間のなか、ふたりの言葉にも余裕がなくなっていった。
ケンカしないことが、いい関係の条件ではない。
追い詰められたときに言葉が荒れても、そこから戻れることに、マラリンは希望を見ていた。
仕事でも家庭でも、人を傷つけない言葉だけを選び続けるのは難しい。
けれど、いつも穏やかでいられることだけが、いい関係の条件ではない。
言い方がきつくなったあとも、そのままにしないことが大切になる。
本書が描いているのは、極限状態で助け合う姿だけではない。
余裕を失えば相手を傷つけることもあり、それでも戻ろうとする姿まで書かれている。
本書を読み、言葉ひとつで距離ができてしまうことを恐れている人に、向き合うことの意味を考えさせられた。








