30代までは順調に出世してきたのに、40代に入った途端、急に社内での存在感を失い、成長がストップしてしまう人がいます。その原因は、本人が「最もスマートで効率的だ」と信じ込んでいる「ある計算方法」にあります。その数字が、実は成長への強力なブレーキとなっているのです。今回は、書籍『リーダーの仮面』の系譜を引く『数値化の鬼』から、ベテラン社員が陥りがちな「割り算(確率)の罠」とその恐るべき正体を暴く。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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ベテランの保身
40代になり、ある程度のポジションやキャリアを確立すると、人は「がむしゃらに行動すること」を避けたがります。
「もう若い頃のように泥臭く動く体力はない」
「これからは量ではなく、効率と質で勝負するべきだ」
こう言って、自らの行動量を減らし、スマートに見える仕事のやり方に移行しようとする。
しかし、ここに極めて不都合な真実があります。
効率や質を重視しているように見えて、その本質は「失敗することへの恐怖」からくる単なる保身です。
40代のベテランが、行動量(足し算や掛け算)を増やすことをやめ、割り算(成功率や成約率などの確率)にこだわり始めた瞬間、その人のビジネスパーソンとしての成長は完全に停止します。
分母を減らす「割り算」の悲劇
『数値化の鬼』という本で私は、この「確率」という数字がはらむ恐ろしい欺瞞について、次のように警鐘を鳴らしています。
どちらのほうがすごいと思いますか?
おそらく、前者のほうを選ぶかもしれません。
しかし、それが誤解の始まりです。
成約率80%の人が、10件中8件の契約を取ってきていたとしましょう。
一方で、成約率50%の人は、50件中25件を取っていたとします。
いかがでしょうか。
これでも、前者のほうが優秀だと思うでしょうか。
この場合は、後者のほうが評価されなくてはいけません。
いくら「確率では勝ってる」と言っても、8件と25件では、その差が3倍です。
――『数値化の鬼』より
「私は契約率80%の優秀な人材です」と胸を張る40代社員は、実は「自分のプライドと評価を守るために、失敗しそうな難しい案件には手を出さない」という行動制限に走っています。
失敗を恐れるあまり、自ら「挑戦の分母」を徹底的に減らし、打率を良く見せようとしているのです。
会社が求めているのは、パーセンテージという架空の安心材料ではなく、企業利益を最大化する「絶対的な成果の数(分子)」です。
どれほどスマートな確率をアピールしたところで、泥臭く動き回って大きな成果の絶対数を叩き出す「行動量ファースト」の社員には、絶対に勝てないのです。
行動量ファーストに回帰せよ
確率の罠に引きこもったベテランは、やがて自分でバットを振ることをやめ、他人の失敗ばかりを指摘する「評論家」へと退化していきます。
この評論家こそが、組織から煙たがられる「働かないおじさん」の正体です。
40代で成長を止めず、生涯現役で活躍し続けるための唯一の解決策は、確率という「割り算の麻薬」を今すぐ捨てることです。
どれほど経験を積もうとも、ビジネスの基本は「D(行動量)」の最大化です。
打率を良く見せるために打席に立つ回数を減らすのではなく、1回でも多く打席に立ち、バットを振り続ける。
リーダーの仮面をかぶり、自らの「行動制限」という甘えを排し、泥臭い絶対行動量という現実に向き合う人だけが、変化の激しいビジネス社会を最後まで生き残ることができるのです。




