ALEXANDRA CITRIN-SAFADI/WSJ
10年以上前、コンピューターオタクだった唐傑氏と楊植麟氏は、人間のように思考する機械を構築する夢を抱く教師と生徒に過ぎなかった。今や2人は、米国の人工知能(AI)先駆者たちに強い警戒感を抱かせるほどの、中国AI界の大物となっている。
清華大学の教授である唐氏は、AIモデルの性能と世界的な利用規模で米アンソロピックと オープンAI を猛追する企業の一つ、Z.AIの共同創業者だ。一方、かつて唐氏が同大学の最高学術賞に推薦した楊氏は、別の企業である月之暗面(ムーンショットAI)を率いている。両社とも評価額は数百億ドルに上る。
中国製AIモデルの急速な台頭は、シリコンバレーと米政府の双方で数々の疑問を生み出している。中国のAI研究機関はどのようにしてこれほど急速に発展したのか。彼らのAIモデルはどこから生まれたのか。唐氏や楊氏が率いるような企業は米国製モデルから盗んでいるのか。そして彼らの製品は、米国の国家安全保障を守るために禁止されるべきなのか。
唐氏と楊氏の経歴は、中国のAI推進が突然始まったものではないことを示している。49歳の唐氏は、約四半世紀にわたり機械学習に取り組んできた。10年以上前の時点で、同氏は言語理解や顔認識といった、人間が担うようなタスクの処理にコンピューターを使う分野の最前線に立つ、中国のAI専門家の一人だった。
唐氏や楊氏、そして他の研究者たち――その多くは清華大学など少数の機関で活動を始めた――は、中国のテック拠点でシリコンバレーのようなコミュニティーを形成している。研究成果を発表する文化に加え、ダウンロードや改変が基本的に無料のオープンソース技術が中国の開発者に好まれていることから、彼らの間では知識がスムーズに行き交っている。
生成AI時代に追いつくため、中国企業は、電子機器や自動車、クリーンエネルギー分野での成功の背景にもある、創意工夫と模倣を組み合わせたおなじみの手法に頼ってきた。中国のAI開発企業らは 米国で訓練を受けたコンピューター科学者を帰国させ 、米国での進展を綿密に注視してきた。
さらに物議を醸しているのは、一部の企業が米国のモデルを「蒸留」し、自社モデルの訓練を高速化させているとみられる点だ。この手法では、新しいシステムが既存のシステムに数十万もの質問を投げかけ、その回答を分析することで学習する。
アンソロピックは、Z.AIとムーンショットAIを含む中国企業が大規模な蒸留を行い、利用方針に違反していると 非難している 。両社ともこの問題についてコメントしていない。中国のAIモデル開発企業に勤める人々は、蒸留は世界的に広く行われており、一部の中国企業は米国企業よりも積極的にこれを利用している可能性があると認めている。
実業家のイーロン・マスク氏は6月、中国がアンソロピックの最上位モデル「フェイブル」に追いつくのは2027年第1四半期までないと予測した。唐氏はXで「そんなに長くはかからない」と反論した。







