JR山陽新幹線「こだま」JR山陽新幹線「こだま」 Photo:PIXTA

生成AIやSNSによって大量の文章が流通するいま、目の前の情報を「書いてあるから正しい」と鵜呑みにするのは危険だ。かつてマスメディアの編集部が担っていたファクトチェックを、読み手自身が肩代わりする時代になっている。偽情報に惑わされないために、何をどう確かめればいいのか。言語学者が3つの方法を解説する。※本稿は、言語学者の石黒圭『本物の読解力』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

情報の真贋を
どう見分けるか

 今、私たちは生成AIが作りだした文章に囲まれています。私たちが生成AIに指示を出して作らせた文章もそうですし、私たちがインターネット上で目にする文章の相当数もおそらく生成AIが作りだしたものです。そうしたデータは誰も持っていないので断言はできないのですが、識者に非公式に聞くとそのような答えが共通して返ってきます。少なくともそう疑ってみる必要はありそうです。

 また、人間が作りだした文章だからといって、嘘がないわけではありません。20世紀のようなマスメディアが発信を独占していた時代にも問題はありましたが、少なくとも現在目にする文章よりも質が高い文章が流通していました。なぜならば、プロの校閲者が目をとおし、事実関係の誤りを修正したうえで発信が行われていたからです。新聞社や出版社の編集部が文章の一定の質を担保していたと考えられます。

 現代は、SNS等をつうじて誰でも発信者になれる発信民主化の時代です。もちろん、そこには少数者の多様な発想に触れられるという長所もありますが、文章の質という点でいうと、校閲者によるチェックのないものが広く流通しており、質は確実に下がっているという短所もあります。

 つまり、多様な情報に触れられるぶん、かつてはマスメディアの編集部が担当していたファクト・チェック(Fact Check)を読み手が肩代わりする必要がある時代を迎えているわけです。

 その意味で、現代は、私たちが身の周りの文章を疑いの目で読まなければいけないファクト・チェックの時代になったともいえるでしょう。AIが生成した文章にせよ、人間が執筆した文章にせよ、どこかに嘘が混じっている可能性があるという厳しい目で臨み、本物か偽物か、その真贋を見分けなければいけないのです。では、どのようにして真贋を見分ければよいのでしょうか。

まず「常識」と
照らし合わせて読む

 真贋を見分ける1つ目の方法は、私たちの常識に照らしてみることです。私たちの常識と文章の内容に食い違いがあれば、その文章に嘘があるか、あるいは私たちの常識が誤っているかです。次の文章を読んでください。

・沖縄に行ってゴルフをしたとき、茂みの暗がりでうっかりハブの足を踏んでしまい、かまれて大変なことになった。

・こだまが横浜駅を発車してから、私は同行者へのインタビューを開始した。

 一文目でおかしいのは「ハブの足」です。いうまでもなく、ヘビに足はありません。踏むとしたら、頭か胴か尾でしょう。どこを踏んでも大変なことになりそうですが、足を踏むことだけはありません。

 二文目でおかしいのは「横浜駅」です。「こだま」と書いてあるので、取材者と同行者は新幹線に乗っていたと想像されますが、新幹線にあるのは新横浜駅で、横浜駅はありません。

 おそらく読者のみなさんはこの2つの誤りにすぐに気づけたと思うのですが、それは、2つの文に嘘が混じっているのではないかという疑いのもとで読んだからです。そのような疑いの意識がなければ、嘘に気づかず、読み飛ばしていた可能性が高そうです。