昨日(7/28)も山口県内に大雨が降って、うちの山田錦を2000俵ほどつくってもらっている農家さんも被害を受けました。まだ避難中で、稲作への影響はわからないのですが、こういう自然災害で突発的な品不足も起こりうるので、なんとか山田錦の増産を実現させたいです(※)。

※7/26付の米穀市況速報によると、農水省は「清酒用原料米の安定取引に向けた情報交換会」において、26年産米より「酒造好適米の増産は生産目標数量の枠外にする」という考えを示したそうだが、実際どこまで実現されるかは今後を注視する必要がある。

−−−−増産に対して、具体的な打開策は見つかりそうですか。山田錦のピーク時の生産量は今より10万俵多い40数万俵でしたが、その程度まで増やせるのでしょうか。

桜井 そのピーク時ぐらいまでは、少なくとも伸ばせると思います。

 私が、この山田錦が不足している問題を、色々なところで正面切って言っていますよね。当然ながら、農水省やら、弊社が多く買うから自分たちが買い付けられないと思っている同業者やらから睨まれていますが、必要だから言っているわけです。

 結果として、いくつか作りたいと名乗りをあげてくれる農家が出てきました。まだそんなに沢山にはならないけど、そうした農家が山田錦を作り始めてベンツを買った、という状況ができれば、ほかの農家もドッと動くと思います。36万〜37万俵ぐらいまでが胸突き八丁(苦しいところ)で、それを過ぎたら一気に増えるのではないかと期待しています。

−−−−そうした動きが早く本格化するといいですね。

桜井 あまりに小さすぎたうちの酒蔵はもちろんのこと(注:先代社長の父親が亡くなり、社長に就任した1984年当時は、“ロング倒産”状態といわれるほど苦しい経営状況だった)、そもそも日本酒に対して国が保護してくれようとしたことはありませんでした。だから、良かったんです。今の私たちがある。

 国が補助金をつけてやることで、成功する可能性はほとんどありません。最近も、国酒振興で国が日本酒に目を向けてくれたのは有り難いのですが、一律的に補助金をばらまくような施策になりかねません。

 たとえば、どこかの国で業界団体や出先機関が、日本酒の試飲会を大々的にやるといったことです。すでにその国に輸出している酒蔵にとってはあまりメリットがないし、補助金付きだからと集まってくる大方の酒蔵も本気で輸出を伸ばそうというところは少ないですから、瞬間的にその場でお客様に受けても、日本酒振興としての効果は持続しません。

 結局、日本酒の振興は、個別の酒蔵の自主性に任せてしか進まないのではないでしょうか。逆境をはねのけるのは、私たちにとって慣れた闘いです(笑)。