「職場で好かれるベテラン」の特徴・ベスト1Photo: Adobe Stock

あなたの職場には、若手からよく相談され、慕われているベテラン社員がいないだろうか。その一方で、誰からも相談されず、若手との距離が開いているベテランもいる。その差は何なのだろうか?本記事では越川慎司著『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』をもとに、その答えを解説する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

「正解」を与えられて、愚痴をこぼす若手

以前勤めていた職場で、上司と部下のこんなやり取りを見たことがある。

「あの……◯◯さん、少しご相談があるのですが」

ある若手社員が困ったような表情で、ベテラン上司のデスクへ向かう。

すると、その上司はどこか誇らしげな顔で腕を組み、話の途中でこう遮ったのだ。

「ああ、それはだな、こうやって対処するのが正解なんだよ。前にも似たような事例があったから、俺の言う通りにやっときな」

長年の経験から、ベテラン上司は即座に「完璧な答え」を提示して見せた。

本人は「頼れる先輩として、手っ取り早く解決策を教えてあげた」と、満たされた表情を浮かべていた。

しかし、相談したはずの若手社員の表情を見ると、どこか冷めていて、小さく「……あ、はい。ありがとうございました」と頭を下げて自席に戻っていった。

そして案の定、その若手は後で同僚に「結局、自分の意見は何も聞いてくれず、一方的にアドバイスされて終わりました」と苦笑いしながら愚痴をこぼしていたのだ。

「職場で嫌われるベテラン」の特徴

部下が困っているなら、自分が蓄積してきたノウハウを惜しみなく授け、手っ取り早くトラブルを解決してあげる。
後輩思いのベテランに、非常にありがちな行動である。

本人は「良かれと思って教示している」「親身になってアドバイスしている」と本気で信じている。

だからこそ、アドバイスをした後に部下がどこか冷めた顔をしていたり、距離を置かれたりすると、「せっかく教えあげたのになぜ引いているんだ」と困惑してしまう。

しかし、残念ながらその認識は大きな間違いだ。

頼られてもいないのに上から一方的に「答え」を与える態度は、本人が思っている以上に部下からの信頼を損ね、周囲から「教え魔」として煙たがられる最大の原因になるからだ。

好かれるベテランは「一緒に考えようとする」

では、若手に慕われるベテランは、何をしているのだろう。

『会社から期待されている人の習慣115』には、その答えが載っている。

部下との定期的な1対1の対話において、期待されているリーダーの71%が、正解を教えるより「問いを共有する」ことを心がけていると、調査によってわかりました。これは一般リーダーにおける比率の1.5倍です。
 

そして彼らは「どう思う?」と聞く前に、「自分も迷っている」と正直に伝えていました。完璧なリーダーを演じるのではなく、一緒に考える姿勢を見せる。この正直さによって、部下の主体的な思考を引き出していたのです。
 

実際、問いを投げかけるリーダーのもとでは、部下の自律的な行動が45%増えるというデータも得られました。
(越川慎司著『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』より)

職場で嫌われてしまうベテランは、自分の知識を誇示するように「正解」を語り、部下の思考と成長の機会を奪ってしまう。

「こうすればいい」と一方的に正解を教えてしまう行為は、部下から「自分で考える機会」を奪い取り、自律的な行動を削いでしまう。

相談を受けたとき、すぐに正解を語り始めない。

同じ目線で一緒に考えるからこそ、部下は「自分の意見を尊重してくれている」と感じ、自ら思考して動き始めるのである。

越川慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー 代表取締役社長
日系通信会社や外資ベンチャーなどを経て2005年にマイクロソフト米国本社へ入社。その後、日本マイクロソフトの役員としてExcelやPowerPointなどの事業責任者を務める。2017年には週休3日・複業を実践する会社、株式会社クロスリバーを設立し、800社以上の働き方改革を支援。年300回以上提供する企業向けオンライン講座の受講者満足度は平均96%、行動に移す受講者は95%以上。著書は『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)や、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など33冊、累計130万部。NHK、TBS、テレビ東京、PIVOT、NewsPicksやReHacQなどメディア出演多数。