部下を困らせる「上司の声掛け」・ワースト1Photo: Adobe Stock

部下にフランクに声をかけ、本音を引き出そうと努めている上司は多い。しかし、その何気ない一言こそが、部下のやる気を奪い、心を閉ざす原因になっているかもしれない。17万人の行動データが解き明かす、部下に嫌われる上司が連発している「最悪の言葉」とは?(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

部下を困らせる「上司の口癖」

部下との関係を良好に保とうと、職場でマメに声をかける。
1on1の面談では、お互いが緊張しないようにフランクな雰囲気を作ろうとする。

そうやって、「話しやすい上司」になる努力をしている管理職は多い。

そんな人が、よく口にしがちな言葉が、これだ。

『最近どう?』

こう聞けば、部下は自由に話したいことを話してくれるだろうと信じて、多用している上司は少なくない。

だが、この手軽な声掛けが、部下の心を深く傷つけ、やる気を一気に奪い去っていることに気づいていない。

508社に勤める20~30代の一般社員に匿名アンケートを実施したところ、「モチベーションが下がる上司からの声掛けは?」という質問への回答1位は「最近どう?」でした。
 

理由は大きく2つありました。「何について聞いているかわからないから回答に困る」と、「そもそも私なんてどうでもよいと思っているから適当に声をかけていると感じる」です。
 

そこで、同じ508社の管理職に調査したところ、期待されているリーダーの78%が「最近どう?」という質問を避けていることがわかりました。一方で、一般リーダーで「最近どう?」を意識して控えている人は23%にとどまりました。
 

「最近どう?」は、聞く側にとっては楽な質問ですが、誰に対してもできる質問です。具体的な質問をするから、自分に興味を持ってくれているという姿勢が伝わるのです。
――『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』(越川慎司 著)より

相手への本質的な関心や準備を欠いたまま、その場の思いつきで言葉を発してしまう。

その浅薄な態度が、部下に「自分のことなんて本当はどうでもいいのだ」と感じさせているのだ。

慕われている上司は、何を話しているのか?

では、部下から「この人は自分を本当に見てくれている」と絶大な信頼を寄せられ、組織を温かく率いているリーダーは、何をしているのだろうか。

17万人の行動記録と評価データを分析したところ、意外な結果が見えてきた。

彼らは、具体的な質問をすることで、相手に興味を持っているという姿勢を伝えていたのだ。

外資系メーカーの女性マネージャーは、事前準備をして部下との対話に臨んでいました。
 

「1on1の前に、その週の部下の動きを振り返る。大変そうだった場面、頑張っていた場面を思い出して、そこから切り出す。“あの会議での発言、良かったね。あの後どうなった?”といった感じ。すると、部下も“見てくれているんだ”と感じて話しやすくなる」
――『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』(越川慎司 著)より

具体的な質問は、相手を観察していないとできない。

だから、「あなたのことを気にかけている」というメッセージが伝わり、部下も心を開いてくれる。

「とりあえず雑談」をする前に、部下に興味を持とう

「最近どう?」という言葉は、聞く側にとっては最も楽な質問だが、誰に対しても使える「手抜きの証明」でもある。

一方で、相手を主役にした対話を成立させるためには、日頃からの観察と準備が欠かせない。

結局のところ、部下に関心を持たず、自分本位の楽なコミュニケーションに終始する上司に、人がついてくることはない。

自分の都合で安易な言葉を投げかけるのをやめ、部下の努力や課題に真摯に向き合い、具体的な問いかけを通して敬意を伝えられる人。

それこそが、部下から「この人のために力を尽くしたい」と心から慕われる、真のリーダーなのである。

(本稿は、越川慎司著『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』の内容を抜粋・編集した記事です)

越川慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー 代表取締役社長
日系通信会社や外資ベンチャーなどを経て2005年にマイクロソフト米国本社へ入社。その後、日本マイクロソフトの役員としてExcelやPowerPointなどの事業責任者を務める。2017年には週休3日・複業を実践する会社、株式会社クロスリバーを設立し、800社以上の働き方改革を支援。年300回以上提供する企業向けオンライン講座の受講者満足度は平均96%、行動に移す受講者は95%以上。著書は『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)や、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など33冊、累計130万部。NHK、TBS、テレビ東京、PIVOT、NewsPicksやReHacQなどメディア出演多数。