死ぬ間際に、「いい人生だった」と心から思うにはどうしたらいいのか?
本記事では、山口周氏に「決して寝る前に読み始めないこと。一度ページをめくってしまうと止めるのは不可能です。」と絶賛され、日経新聞、週刊現代などの書評で話題となっている​『極限の漂流118日間』をもとに、「人生最後に後悔しない人の習慣」についてライター小川晶子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

【老後】人生最後に後悔しない人が「生前」にやっている1つのことPhoto: Adobe Stock

最後に「良い人生だった」と思うには?

 40代も半ばを過ぎると、人生後半をどう生きるか、意識することが多くなる。
 体力や気力にかげりが出てきて、「あ、ずっと元気に活動できるわけじゃないんだ」と否が応でも気づくのだ。

「仕事で成果を出す」「子どもを育てる」といった大きな目標も、ずっと続くわけではない。
 自分がいつ死ぬかはわかりようがないのだが、「良い人生だった」と思って最期を迎えたい。
 どうすれば、最後に自分の人生を心から肯定できるだろうか?

妻の思い出を書き続けた晩年

 話題のノンフィクション『極限の漂流118日間』(ソフィー・エルムハースト著/村井章子訳)は、イギリス人夫婦が太平洋で経験した極限状態でのサバイバルが中心だが、注目したいのはそこだけではない。

 夫モーリスと妻マラリン、ふたりの人生が丁寧に描かれているのだ。
 とくにモーリスの晩年の描写はとても味わい深く感動的である。

 マラリンより長生きしたモーリスは、自分の記憶を書き記すことで愛する妻をよみがえらせようとした。
 知人への手紙のかたちで、本一冊分になるほどの量を書き続けたのだ。

執筆中、彼はつねにマラリンと共にあり、彼女の息吹を感じながらふたりの航海を再構成していく。
この作業は彼の心をあらためて悲しみで満たすことになった。一つの章を書き終えてふと目を上げるたびに、そこにマラリンがいないと気づくのはつらかった。

――『極限の漂流118日間』より

最終的にこの手紙をまとめたものは本になって出版されたが、モーリスの死後、たくさんの在庫が埃をかぶって残った。あまり売れることなく忘れられていったのである。

モーリスにとって、本が売れなかったことが「後悔」となっただろうか?
 いや、そんなことはない。
 モーリスの目的はすでに達せられていた。マラリンを偲ぶために、思い出を記録するために書いたのだから、多くの人に読まれる必要はないのだ。
 もし、途中までしか書けないままだったとしたら、それこそが「後悔」となっただろう。

どうすれば「良い人生だった」と思えるのか?

どうすれば最後に「良い人生だった」と思えるのか。
 モーリスはこう言っている。

「世間でよく言われることはだいたい疑ってかかる私だが、人間には愛したい、愛されたいという願望があるというのは真実だと思う。
人間的な感情で心を満たしたいと願い、それが叶ったら、よい人生だったと言えるのではないだろうか。私にとってはマラリンの生きざまを書くことが、そのためのいちばん確実な方法なのだ」

――『極限の漂流118日間』より

人間的な感情、愛で心を満たせる方法を見つけることが重要なのだとわかる。
 本書は、極限の漂流体験だけでなく、その後の人生を語ることで私たちに多くの示唆を与えてくれている。