「私も、引きこもりの予備軍だなって、思っちゃったんですよね」

 そう明かすのは、この4月まで大手企業のキャリア職として勤務していた、40代前半の井手真奈美さん(仮名)。

 職場にいた頃から、「引きこもり」の人たちの気持ちが理解できたという。退職してから半年近く、仕事もしていない。

「私も、引きこもりかもしれないと思ったのは、環境が整っているからです。ある日、突然、緊張の糸が切れる気持ちが、わかるような気がするんですね。私は優等生ではない。ただ、ずっと優等生的な仕事をしてきて、もういいやって…」

 ある日、朝起きたら、目が回って、とてつもなく吐いた。いくら寝ても、気持ちが悪く、夜になって、ふらつきながら病院に行くと、医師から、こう告げられた。

「ああ、自律神経失調症ですね」

 彼女は、そのまま点滴を受け、薬を渡されたものの、電車に乗るのが怖くなった。

突然給与が100万円ダウン!
今までのキャリアを否定される

 会社を辞めた直接のきっかけは、突然、直属の部長から、「年間の給与を100万円以上下げる!」といわれたことだ。その結果、12年前に同業他社から転職入社してきた当時の水準に戻った。

 井手さんは、都内の実家で、両親とともに暮らしている。だから、すぐに家賃が払えなくなるといった心配があるわけではない。

 ただ、前の会社から通算して20年近くにわたり、コツコツとキャリアを積みあげてきた。その領域では、プロとして十分やっていける自負もある。給与は、そんな一生懸命働いてきた自分への成果だと思っていた。

 この会社では、リーマンショック以降、業績が悪化。子会社に出向していた新社長が就任すると、リストラで大幅な人員削減を行い、給与体系も年功序列から評価主義を取り入れた。