「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。
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なぜ、他人のことが気になるのか?
そもそも、なぜ、私たちはこんなにも他人のことが気になってしまうのでしょうか。外来でよく聞く話があります。
「SNSを見ていたら、昔の同級生がすごく充実した生活を送っていて、自分と比べてしまって、なんか自分って、学生時代から全然成長してないなぁって……」
「友人が昇進したと聞いて、自分は全然昇進なんか夢のまた夢というか。だから変にひがんじゃって、素直におめでとうって言えない自分が嫌で」
これは、その人が特別、性格が悪いわけでもなければ、心が弱いわけでもありません。
ただ、「他人」という尺度でしか、自分を評価できなくなっている状態に陥っているだけです。
「あの人はこういうことができる」→「だから私も同じくらいできないとダメだ」
「あの人はこういうことで人から褒められている」→「自分はそれで他人から褒められたことがないからダメだ」
このように、自分がダメな理由が、「知り合いができているのに自分はできない(そうなれていない)」という他者を軸にして自分を評価するように、脳にインプットされている状態なのです。
あることができる人は、あなたが簡単にできることができないかもしれない。あることが職場で褒められた人は、プライベートに大きな問題を抱えているかもしれない。
しかし、それらは表には出てきません。
だって、自分ができないとか、問題を抱えているということを、普通の人はいちいち知り合いに言いふらしたりはしないからです。
知り合いの上澄みの良い所だけを見て、「自分はできない」と考える危険性が、少し伝わったでしょうか?
他人のフィルターを通して自分を評価しない
そして、時にやっかいなのは、その比較対象がとんでもない所に設定されている時です。
特に、SNSで目に入りやすいバズっている「すごい人」の投稿は、その人の人生の最もキラキラした瞬間だけを切り取ったものです。失敗した日も、落ち込んでいる夜も、冷蔵庫が空っぽで途方に暮れた朝も、そこには映っていません。
でも、多くの人は「この人はいつもこんなにキラキラしている。なのに自分は……」と、相手の「人生全体」と自分を比べて、落ち込んだりします。
これは例えるなら、野球を始めたばかりの人が「目標はメジャーリーグで活躍する日本人選手と同じレベル」と設定するようなものです。
もっと言うなら、その選手の「ホームランを打った瞬間の動画」だけを見て「自分はあのレベルで打てない」と落ち込んでいるようなものです。
有名選手だってスランプの時期が必ずあるのに、そこをまるっと無視しているのでは、比べる相手も、比べる土俵も、根本的に間違えてしまっています。
知り合いの話も同じです。人は誰かに何かを話すとき、無意識に「一番いいところ」か「一番しんどかったところ」を話しやすいものです。
日常のフラットな部分はほとんど出てこない。理由は「つまらない話だから」。
友人の幸せな報告を聞いて、「あの子はあんなに幸せなのに、私は何で……」と凹んだり、逆に、「あの子があんなに辛い思いをしているのに、自分が辛いなんて甘えじゃないか」と自分を責めたりしていませんか?
これは全部、他人のフィルターを通して自分を評価した結果のエラー(バグ)なのです。なぜこんなことが起きるのか?
理由は単純で、他人と自分を比較することは動物としての本能に近いからです。群れの中で自分の立ち位置を把握することは、かつては生存に直結していました。
自分と他人を比較しない
でも、現代社会で「他人より少しでも劣っていたら死ぬ」なんてことは、まずありません。
今の私たちの脳は、もはや必要のない場面で過剰に「比較センサー」を働かせている状態です。本能だから仕方ない部分はある。
でも、その誤作動に毎回振り回される必要はありません。それに、そもそも「何が価値あることか」は人によって全然違います。
年収が価値だと思う人もいれば、好きな時間に好きなことができるほうが価値だと思う人もいる。
「あの人はすごい、自分はダメだ」という比較は、全員が同じ定規を持っているという前提で成り立っています。
その前提自体が、間違いだと私は思います。
他人のことが気になってしまうこと自体は、仕方ありません。
でも気にするなら、せめてその対象を絞りましょう。自分の人生に本当に関係のある人、自分が大切にしたい人、その人たちのことだけを気にすれば十分です。
見たこともない誰かのSNSの投稿に、あなたの脳のバッテリーを使う必要はありません。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。




