「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。

嫌なことを考えるとき、あなたの脳の中で起きていることPhoto: Adobe Stock

激重アプリが起動しっぱなしの状態に
なっていませんか?

 帰宅後、ふとした瞬間に、嫌な上司や先輩の顔が頭をよぎる。

 昼間のミスを延々と思い出して落ち込む。あの先輩、同期のあの発言、やっぱり許せない……

 こんなふうに、家に帰っても、お風呂に入っても、寝る前まで職場や学校で起こった嫌なことをぐるぐる考え続けてしまう経験、ありませんか?

 これはスマホに例えるなら「今使わなくていい激重アプリを、バックグラウンドで常時立ち上げっぱなしの状態」です。

 結果どうなるか?

 バッテリー(=心の余裕)が高速でゴリゴリ減り、スマホ(=自分の心身)の挙動がもっさり重くなります。

 メモリ(=自分の処理能力)も無駄に消費されて、本来ちゃんと動くはずの「風呂に入る」「食事を楽しむ」「趣味をやる」といったアプリが全然サクサク動かなくなるのです。

 最悪、寝落ちという強制充電でしか、翌日を迎えられなくなります。それでもまだ眠れたならマシなほうです。

 激重アプリの起動が続くと、充電に匹敵する睡眠すら取れなくなってきます。

 外来に来られる方の中にも、こういう方がたくさんおられます。

特に何かあったわけじゃないんですけど、なんか毎日ぐったりしていて……

 しかしお話を伺っていくと、職場で起きたちょっとしたことを帰り道でも考え、お風呂でも考え、布団に入ってからも天井を見ながら考え続けている。

 本人はそれを「考えている」という自覚すらなく、「気になっている」くらいにしか認識していなかったりします。これがまさに、バックグラウンドで激重アプリが起動しっぱなしの状態です。これでは帰宅後も全く休めていません。

 ところで、スマホの動きがなんだかもっさりしてきたなぁ~、と考えた時、あなたは何をしますか?

 多分、バックグラウンドで立ち上がっている、使っていないアプリを一旦全部終了させますよね。

 時には再起動も必要かも? そうすると挙動がかなりサクサクに戻ります。これを、自分の脳でもやりましょうよ、というお話です。

会社や学校を出たら、
「仕事/学業アプリ」は終了する

 会社や学校を出たくらいから、徐々に「仕事/学業アプリ」を終了していく意識を持つこと。これがまず第一歩です。

「いや、あの問題は家でも考えないと間に合わない」という事情がある場合は、家に持ち帰らずに、カフェや電車の中など別の場所で、キリのいいところまで済ませるようにしてください。

 この行動が必要であることには、明確な理由があります。

 睡眠障害の治療でも言われることですが、人間の脳は「この場所は、これをする場所だ」と学習する性質があります。だから睡眠障害の治療では「寝る時以外はベッドに入らない」という行動が推奨されるのです。

 同じ理屈で、自宅の自室で会社や学校のことをチラチラ考えてため息をつくたび、脳は「家でも会社や学校のことを考えるんだな」と間違えた学習をしていきます。

 結果、家という本来リラックスできるはずの場所が、どんどん「会社や学校のことを考える場所」に上書きされていきます。

 これでは、帰宅しても脳内は職場や校内にいるという嫌な在宅反省会状態になり続けます。これを読んで、もう手遅れかも、と思わなくても大丈夫です。

 AIだって、しばらく出てこなかった話題は、徐々に優先度が下がる(=忘れていく)ようになっています。

 あなたの脳も同じで、「家では家(自分)アプリだけ使う」という習慣を意識的に繰り返していけば、脳の学習はちゃんと上書きされていきます

 仕事などの嫌なことを考えてしまう激重アプリ、そしてそもそもアンインストールできない「嫌な人」「嫌な場所」のプリインストールアプリ。

 これらと、どう付き合えばいいのか? 答えはシンプルです。

 開いてしまったら、こまめにタスクキルして閉じる。

 スマホでも、使い終わったアプリをそのままにしているとバッテリーを食い続けますよね。だから多くの人はタスクスイッチャーを開いて、使っていないアプリを片っ端からスワイプで閉じていくはずです。

 これと同じことを、脳の中でやってあげてください。嫌な人のことを考えそうになったら、「はい、これは今いらないアプリ」とスワイプで閉じる。

 どうしても必要な時だけ開いて、用が済んだら即閉じる

 これが激重アプリの立ち上げっぱなしを防ぐ、一番シンプルな方法です。これを脳内でやっていきましょう。

激重アプリを家で開くのはやめよう

「わかってるけど、そんなに簡単に割り切って考えるなんてできないよ……」という人もいるでしょう。

 でも、それはあなたが真面目で、かつ脳のOSが古い設定のまま「嫌なことでも、いや、嫌なことだからこそ、努力して考え続けて解決しなさい」と学習してしまっているからです。

 これは、あなたが悪いということでも、あなたの性格の問題でもありません。むしろ、真面目に頑張ってきたからこそ、ゴミ箱に捨てづらい感じが強いのです。

 なので、今日この話を読んだ後から、少しずつで良いので自分の脳の使い方をちょっとだけ変えるだけでOKだと、私は思います。

 精神科医がよく言う「気持ちの切り替えをしましょう!」は、要するに「その激重アプリを家に帰ってまで開くのはやめようぜ」と同じ意味です。

 再起動(リフレッシュ)も交えながら、自分の脳のバッテリーを自分の好きなことに使えるように、メモリを上手く解放していきましょう。

バク@精神科医
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。