世の中をあっと言わせる偉業を成し遂げた人は、どんなことを考えていたのか。サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本映画史上初のグランプリを受賞し、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』を上梓した長久允氏の思考を辿ります。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
納得はされても刺さらない
企画をするときは、その反響を考えるのが大切です。
しかし、良いと思ったのになぜか人の心には残らない、ということも起きます。
映画監督/脚本家の長久允(ながひさまこと)さんは、学生時代、自主映画を作ったことがありました。
しかし残念ながらその映画は「さっぱりなんの賞にも引っかからなかった」といいます。
まずPFF(ぴあフィルムフェスティバルという若手映画監督の登竜門的賞レース)で評価されたかった。売れたかった。自分が「最高だと思うか」なんかよりも、他者から評価されることを目指していた。「なんとなく映画っぽい」「それっぽい」ものを作っていた。作るべきだと思っていた。
私は半端に器用だったので、その頃、流行っていた「群像劇」の脚本を書こうと決め、長編映画を撮影した。
5人の主人公が出てくる、『パルプ・フィクション』と『マグノリア』と『きょうのできごと』を混ぜて煮込んで、劣化させたような映画。大学生の私が当時感じている本当の気持ちや伝えたいことは横に置いて、カッコ良さそうな構造と90年代邦画に多いアンニュイな雰囲気を優先して作った。セリフもアングルも「それっぽい」かどうかしか判断基準になかった。
当時、うっすらだがそのことを自覚もしていたと思う。本当にやりたいことではないけれど、評価されそうだなぁ、他のインディーズ映画よりも技術がありそうに見えてるよなぁ、うん、だから売れるために、私はこれをやらねばならぬ。そんなことを自分で自分に
言い聞かせながら映画を制作した。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p5-6より
説明して納得はされるのに、世の中に出た瞬間に素通りされてしまう、という現象。
それは、「それっぽい企画」になってしまっているのかもしれません。
あとから振り返って、長久さんは「雰囲気だけの空っぽな映画に価値なんてない」と断言しています。
「それっぽいもの」を量産しないために
長久さんはその後、10年間のサラリーマン生活を経て、次に作った映画でいきなりサンダンス映画祭のグランプリを受賞します。
自分が後にたどり着いた作風について、こう語っています。
あの頃と、今とで、何が違うのか?(中略)
それは冒頭で書いた「自由にのびのび書いた」だけでした。「それっぽさ」から遠く離れて書くということ。それだけでした。(中略)
「それっぽさ」にはなんの意味もないのだ。
外側をどんなに綺麗にコーティングしても、
中身が空っぽだったら、それは見る人にはバレてしまうんだ。
――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p7-8,39より
外側を綺麗にコーティングするより、自由にのびのび書く。
それが結果的に世界一という評価を得る。
真に受け入れられる企画とは、綺麗に整えられたものではないのかもしれません。
それよりも大事な、作り手の本当の気持ちがあること。
企画を作る前に、一度振り返ってみたい言葉です。

世界が注目する脚本家が初めて明かす、
「自分にしかできない仕事」のつくりかた
5月30日 東京新聞「書評」掲載
4月12日 読売新聞「本よみうり堂」掲載
佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさん絶賛!
MEGUMIさん愛読書!!
「それっぽいもの」ではなく、
「本当に心を動かすもの」を
表現がいまいちしっくりこない。
この仕事、自分がやらなくてもいいような気がする。
もっとおもしろいものを作りたい。
そんな悩みに、現役サラリーマンでありながら、海外の映画賞で「日本人初」の快挙を総ナメしてきた著者が答えます。
どうしたら、自分だけの表現をし、それを成果に結びつけられるのか。
どんな人でも、「あなたにしか作れない作品」を生み出せるようになる、まったく新しい脚本術が誕生しました!

本当のことしか書いていない。
これからの「世界のスタンダード」を伝える一冊
いま世界で本当に評価されるものは、「何かに似ているもの」ではありません。
ハリウッドで必ず聞かれること。それは、
“What’s your VOICE?”
あなたのボイスは何ですか?
ということです。
つまり、他の誰でもない「あなたが」何を伝えたいか、ということ。
では具体的にどうすればいいのか。
すべてを自分で切り開いてきた著者が、包み隠さず伝えます。
真剣に表現したいと思う人、自分らしさを失わずに働きたいと思う人に、とても響く内容です。
本書の内容
はじめに
「この本の結論を先に言います。」
「それっぽいもの」は最低だぜ!
王道の脚本方式と完全自己流の脚本方式をミックスして
そもそも脚本家ってどうやってなったらいいかわからない問題
Lesson0 世界一になるまでの変則ルート
「私が映画を作ったのは32歳から! おせ~!」
一度は夢をあきらめて、就職! (挫折期)
CMプランナーから、店頭ビデオプランナーに (朦朧期)
倒れて気づく。「クライアントは自分」
そして世界一。日本人初の快挙を、まさか私が。
「そもそも映画ってなんなの?」
Lesson1 何を書く?
「脚本ってなんですか?」
設計図としての書式
Step0 私は何を書くべきなのかを見つける
Lesson2 王道! ハリウッド式脚本法
「で、どうやって書くの?」
Step1 「ログライン」を書く
Step2 登場人物を作り込む
Step3 3幕構成にする
Step4 シーンを作る シーンカード入れ替え検証
Step5 セリフとト書きを書く
Interval あなたが天才かどうかという重要な話。
Lesson3 誰でもできる長久式脚本法
「めっちゃ変な書き方。それでいい。」
Step1 はじめに「怒り」と「悲しみ」がある
Step2 音楽を見つける
Step3 エンドロールの歌詞を書く
Step4 映画のタイトルを決める
Step5 ポエトリーリーディング脚本法
Step6 そのセリフをシーンや人物に振り分ける
Step7 音だけの2時間映画を作る
Step8 直し続ける
Lesson4 迷ったとき役立つかもしれない裏技集
「何も浮かばないよ!」
裏技1 絶対に誰にも言いたくない思い出を書く。
裏技2 SNSには書けない「よくない感情」という金脈
裏技3 会話のセリフがうまく書けないなら
裏技4 設定がうまく伝わってないと感じたら
裏技5 タイトルから考えちゃうっていうのはどう?
裏技6 「ポエトリーリーディング脚本法」に欠かせない号泣プレイリスト
裏技7 「うまい」は敵!
裏技8 極論! 10年書かないでみる
裏技9 おもしろくなくてもいいじゃないか(本気で言っている)
Lesson5 書いたあとどうする?
「映像化しちゃう?」
お金集めをどうするか(自腹、賞金、クラファンそれぞれのやり方)
予算別! 映画の作り方(10万円、100万円、1000万円)
実写映画撮影現場での時間削減工夫集(事前準備と心持ち)
ロケ場所についての具体的解決案
Lesson6 あなたにしか作れないものがある
「情緒不安定なあなたは向いている」
「当事者しか知らない感情がある」
「だから、本当のことしか書かない」……