休日は、平日の疲れを取るために「できるだけ何もしない」という人も多いだろう。しかし、脳の老化を防ぐという観点では、休日の過ごし方にこそ差がつくという。では、いつまでも「老けない脳」を保つ人は、休日に何をしているのか。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏は、著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』をもとに、その意外な習慣を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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休日に「何もしない」は、本当に体にいいのか?
平日は朝から晩まで仕事。ようやく迎えた休日くらい、家でゆっくりしたい。昼まで寝る。ソファでテレビを見る。食事をしたら、そのまま昼寝をする。
「疲れを取るには、これが一番」
そう考えている人も多いのではないだろうか。
もちろん、休息は大切だ。しかし、脳の健康という観点では、休日だからこそやっておきたいことがある。
元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏は、著書『糖毒脳』のなかで、認知症予防のために非常に重要な習慣として「運動」を挙げている。
なかでも、特別な道具も必要なく、休日に簡単にできるのが「ウォーキング」だ。
歩くと「脳の神経細胞」にまで変化が起きる
なぜ、歩くことが脳にいいのか。
その理由の一つが、「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質にある。下村氏は、その働きを「肥料」にたとえている。
BDNFは「肥料」のようなものです。
新たな神経細胞になる「タネ」が埋まっている肥沃な土壌である海馬に、BDNFという肥料をたっぷりとかけることで、新たな神経細胞が芽生えて成長していきます。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
運動をすると、筋肉から「ミオカイン」と呼ばれる生理活性物質が分泌される。それが脳にも作用し、BDNFの発現を促す。
この奇跡のような役割を果たすBDNFを作るために必要なのが、「運動」です。
近年の研究から、運動をすると筋肉から「ミオカイン」と呼ばれる一連の生理活性物質が分泌されることが明らかになりました。
ミオカインは脂肪や肝臓、膵臓など様々な臓器に作用して代謝を調節したり、全身の炎症を抑制したりと、体にとって非常に良い効果をもたらすことがわかっています。
このミオカインが脳にも直接作用し、脳の中でBDNFの発現を促すのです。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
しかもBDNFには、新しい神経細胞の発生を促すだけでなく、脳内に残っている神経細胞同士の「つながり(シナプス)」を増やし、その情報伝達を強化する働きもあるという。
つまりウォーキングは、単に足腰を鍛えるための運動ではない。脳そのものを「チューンアップ」することにもつながるのである。
「ヒラメ筋」を意識して、糖を消費する
歩くときに意識したい筋肉がある。それは、ふくらはぎの奥にある「ヒラメ筋」だ。
下村氏は、ヒラメ筋を効果的に使う歩き方についてこう説明している。
足が地面から離れる瞬間に、ふくらはぎに力を入れ、つま先で地面を「キュッ」と押すように意識する。前傾姿勢で前に倒れ込むようにして歩くのではなく、地面を押して体が上下に浮き沈みしながら進むイメージです。
この動作を意識的に繰り返すことで、ヒラメ筋がさらに多くの糖を消費するようになります。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
なぜ、「糖を消費すること」が重要なのか。
糖を摂りすぎる生活が続くと、インスリンが大量に分泌される。その状態が長年続くと、インスリンが効きにくくなり、脳神経細胞を守る働きまで低下してしまう。その結果、認知症の発症リスクが高まってしまうのだ。
ヒラメ筋は、インスリンの力に頼らず効率的に糖を消費する。だからこそ、歩くことには「脳を育てる」だけでなく、脳を糖によるダメージから守るという側面もあるのである。
特別なトレーニングも、高価な健康器具も必要ない。
「休日に歩く」
これが、「脳が老けない人」が休日に取り入れたい習慣なのである。
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








