あなたは、老後の生活を想像したことがあるだろうか? 「時間に余裕ができたら、見たかった映画やドラマを思う存分楽しみたい」と願う人も多いはずだ。しかし、それが叶わない人もいる。本記事では、元オックスフォード大の医学研究者・下村健寿氏の著書『糖毒脳』をもとに、「老後を楽しめない人の共通点」について解説する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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仕事を引退したら、何をしますか?
「老後は、好きなことをしてゆっくり過ごしたい」
そう思っている人も多いのではないだろうか。
ドラマや映画を「覚えていられない」
先日、定年退職した元上司と久しぶりに食事をした。
仕事の話もひと段落し、「引退後は何をしているんですか」と聞くと、少し照れくさそうに笑いながらこう話してくれた。
「やっと時間ができたからね。現役のころに見たかった映画やドラマを、毎日のように見てるんだよ」
「それは楽しそうですね」
そう返すと、上司は少し困ったような表情になった。
「でもね、困ったこともあるんだ」
「何ですか?」
「内容が全然覚えられないんだよ。登場人物の名前も、何回聞いても頭に入らない」
主人公の顔も、ストーリーも、見ている最中は理解できる。
それなのに翌日になると、「あれ? この人、誰だったっけ?」となってしまうそうだ。
「続きを見始めると、ああ、そうだったって、思い出すんだけどね」
そう笑う上司を見て、「年齢を重ねるとは、こういうことなのかもしれない」と、少し考えさせられた。
「体が健康」なだけでは安心できない
『糖毒脳』という本には、こう書いてある。
定年を迎え、愛するパートナーとのんびり過ごし、たまに遊びに来る孫たちに囲まれる……。そんな穏やかな未来を、誰もが願っていることでしょう。
しかし、その夢は簡単には手に入りません。
少子高齢化が進む日本では、60代、70代になっても働き続けることが求められる時代が訪れています。
ジムに通って体を鍛えたり、健康本を読んで実践したりして体力の維持に努めている方も少なくありませんが、体が健康なだけでは仕事は続けられません。
全身を司る「脳」が正常に機能しなくなると、すべてが無意味になってしまいます。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
認知症を発症すると、老後を楽しむことはおろか、日常生活さえ困難になる。
そして、先ほどの元上司のようにドラマや映画の内容が覚えられなくなるのは認知機能の低下が始まっている兆候だと、『糖毒脳』には書いてある。
「老後を楽しめない人」の特徴
その認知症のリスクを高める意外な要因があると、同書は指摘している。
それが、「糖」だ。
過剰な糖の摂取を長年積み重ねた結果として発症するのが「糖尿病」ですが、じつは糖尿病の人は、アルツハイマー病になりやすいのです。
米国ミネソタ州南東部の地域住民を対象とした大規模研究では、アルツハイマー病患者の81%が2型糖尿病、または糖尿病予備群であったと報告されています。
(下村健寿著『糖毒脳』より)
糖を摂ると、血糖値を下げるためにインスリンが分泌される。
インスリンは脳神経細胞同士の情報伝達をスムーズにしたり、アルツハイマー病の原因となる「アミロイドβ」などによる攻撃から脳神経細胞を守る役割も果たしている。
しかし糖の過剰摂取が続くと、やがてインスリンが出づらくなったり、効き目が落ちたりしてしまう。
結果として、認知症リスクが高まってしまうのだ。
「糖を摂り過ぎている」
これが、将来的に認知症を発症しやすく、老後を楽しめなくなる可能性が高い人の特徴なのである。
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








