「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。
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テイカーには、特殊な対処ルールが必要
過去2回の連載で話題にしているテイカー(クレクレちゃん)相手には、通常の会話ルールが通用しません。
ここでは先に、テイカーに特化した特殊な対応を書いているので、「全員にこんなふうにしないといけないの?」と思わないでください。
テイカーの正体と手口は、前回の説明でわかっていただけたでしょうか?
では、テイカーをどう撃退するのか? 今回は実践編に入ります。
ホラー映画のモンスター対処法みたいな話になりますが、相手は人間としての倫理OSが別物なので、通常の交渉は通用しません。特殊な対処ルールが必要です。
基本ルール①:断る際に理由は言わない
これが最重要です。理由を言った瞬間、交渉の扉が開きます。
「今日は忙しくて……」→「じゃあ明日なら?」
「体調が悪くて……」→「薬飲んで頑張れない?」
「他の予定が……」→「何時からなの? その前に少しだけでも」
テイカーは交渉の天才です。どんな理由も、針の穴ほどの隙間があればそこから侵入してきます。だから理由そのものを与えてはいけません。
ファイアウォールを想像してください。企業の通信ファイアウォールは、怪しいアクセスに対して「なぜブロックしたのか」を説明しません。
ただ、無言で通信を遮断するだけ。これがテイカーへの対処法の基本姿勢です。
基本ルール②:キラーフレーズを壊れたレコードのように繰り返す
使う言葉はこれだけです。
「すみません、無理です」(笑顔で)
「今は手一杯で引き受けられません」(以上)
これを壊れたレコードのように、同じトーンで繰り返してください。
感情を込めてはいけません。感情を込めると「話し合える人」と認識され、交渉モードに持ち込まれるからです。無感情の自動応答bot、と割り切ってください。
テイカーがどれだけ食い下がってきても、同じフレーズを同じトーンで返す。
これだけで大半のテイカーは、「この人からは取れない」と判断して次のターゲットに移ります。
NG対応:使ってはいけない3つの断り方
逆に、以下の3つをやるとテイカーを増長させます。
NG①:「今回は」「次回なら」の条件提示
「今回は無理だけど、次回なら……」は、「次回は絶対取れる」という約束手形です。テイカーは、これをもとに何度でも請求してきます。
NG②:「申し訳ないけど」の過剰な謝罪
謝罪から入ると、テイカーの中で「この人は罪悪感を感じている=押せばいける」と判断されます。謝る必要はありません。あなたは何も悪いことをしていないのですから。
NG③:「代わりに◯◯ならできる」の代替案提示
これも同じ構造です。代替案を出した瞬間、「じゃあその代替案も、もうちょっと良くして」と要求が上積みされます。
盗電モンスターには、コンセントを抜く
前々回の連載で「テイカーは充電禁止のファミレスで盗電する人」と書きました。
この比喩を引き継ぐと、対処法はシンプルです。
コンセント自体を抜くか、あなたが差し出していたバッテリー(時間、労力、気力)への接続を、できなくさせればいいのです。
「すみません、無理です」で電源プラグを抜けば、盗電ポイントと認識されなくなり、モンスターは別の電源を探しに行きます。
断った後のアフターケア:不機嫌は「相手の天気」
断った後、テイカーが露骨に不機嫌になったり、舌打ちしたり、「冷たいね」と嫌味を言ってきたりすることがあります。ここで動揺しないでください。
それは相手の感情処理システムのエラー出力であって、あなたが処理する必要のあるデータではありません。
「相手の不機嫌は天気のようなもの」と考えてください。テイカーの不機嫌も同じです。
雷が鳴ったからといって、あなたが雷を止められるわけがありませんよね。雷が去っていくまで安全な場所で傘をさして待ちましょう。
もし悪口を言いふらされたら?
そんな悪口に流される人ならば、そもそも好かれないほうが幸せです。
テイカーの悪口ネットワークから評価が下がることは、あなたが「搾取しにくいギバー」として、テイカーにとっての価値が下がるだけなので、人生にとってむしろプラスです。
テイカーにとっての「悪人になる勇気」
最後に、一番大事な話を書きます。
テイカーにとっての「悪い人」とは、「無条件に何でも引き受けない人」です。
つまり、テイカーに嫌われるということは、「ちゃんと自分を守れる人」として認識されたということ。これはむしろ勲章です。もちろん、普通の人間関係では、嫌われないに越したことはありません。
でも、テイカーとの関係は、通常の対人関係のOSでは動いていないのです。
彼らにとっての「良い人」=無限に搾取できる人なのです。そんなモンスターに好かれて、一体何の得があるでしょうか?
あなたのバッテリー(時間、労力、気力)は、テイカーに吸われて空っぽになるために存在しているのではありません。
まず、あなた自身が好きなことに使い、次に相互協力できる相手(同じ価値観の人)と一緒に使えたら、そのバッテリーは何倍にも増える奇跡を起こします。
テイカーを断って不機嫌になってもらうこと。それがあなたのスマホから盗電ケーブルを抜く完全勝利の形なのです。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。




