若いころは同僚や後輩から頼られていたのに、気づけば悩みを打ち明けられることがなくなった。経験は積み上がっているはずなのに、なぜか人が相談に来ない。アパレル史上最年少で上場した株式会社yutori社長・片石貴展氏は、著書『自分の言葉で話せるようになりましょう。』で、経験を積んだ人ほどはまりやすい落とし穴を指摘している。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局 淡路勇介)
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経験が増えるほど、相談されなくなる
30代になると、ひと通りの修羅場をくぐり、失敗も成功も自分の経験として語れるようになる。
後輩の悩みを聞けば、「自分のときはこうだった」という答えがすぐに浮かぶ。
ところが、答えを持っている人ほど、相談相手に選ばれなくなっていく。上の人と同じようにがんばれば報われた時代なら、「自分はこうやってきた」というアドバイスは役に立った。
「あなたの時代は、そのやり方でうまくいったかもしれないですが!」と。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より
優しい人ほど、相談の芽を摘んでいる
厄介なのは、アドバイスをする人の多くが善意で動いていることだ。
片石氏が例に挙げるのは、元気のない部下との1対1のミーティング。
部下が「なんか満たされない感じがあって」と打ち明けると、上司は「燃え尽き症候群ってやつかもね」と名前をつけ、「要するにモチベーションが上がらないってことでしょ?」とまとめ、「休みをとってリフレッシュしてみたら?」と解決策まで出す。部下は「あ、ありがとうございます……」と言って会話は終わる。
話を聞き、共感し、解決策も示している。形だけ見れば理想的な相談相手だ。
――同書より
部下は、自分の中にあったもやもやが何だったのかを、自分でたどる前に上司の言葉で片づけられてしまった。相談した側に残るのは「聞いてもらえた」ではなく「まとめられた」という感覚だ。何度か繰り返せば、次に悩んだとき、同じ人のところへは行かなくなる。
30代から相談されなくなる人の特徴・ワースト1は、相談に「答え」で返してしまうことである。
人が相談したくなるのは、答えをくれる人ではない
では、人はどんな相手に悩みを話したくなるのか。
――同書より
片石氏は、同じ場面のもうひとつの会話も示している。上司は「どんなときに特に感じる?」「前は嬉しかった?」と問いを重ね、ときに黙って待つだけ。部下は、1年前に初めて企画が通った夜の記憶にたどり着き、やがて「自分のアイデアを出すのが怖い」と自分の口で言う。上司は一度も答えを出していない。
片石氏はこうした聞き手のあり方を「鏡」と呼び、向かい合うのではなく隣に座るものだと表現する。
経験を話すのは、最後でいい
とはいえ、積み重ねた経験を封印する必要はない。
――同書より
経験がある人は、相手の話の途中で答えが見えてしまう。その答えを一度飲み込んで、「どんなときに特に感じる?」と聞けるかどうか。30代以降も相談され続ける人は、答えを持っていることより、答えを急がないことで信頼を得ている。









