食べログのアイコンが表示されたスマートフォンとLINEヤフー・ベインキャピタルの企業ロゴPhoto:JIJI

レストラン検索・予約サービス「食べログ」を運営するカカクコムを巡る、欧州系投資ファンドのEQTとLINEヤフー陣営による買収価格の引き上げ合戦に変化が出ている。LINEヤフー陣営は9月16日に再び価格を引き上げたが、上げ幅からは苦境もにじむ。LINEヤフーは、共同買収を目指す米投資ファンドのベインキャピタルとの間で結んだ“片務的”ともいえる取り決めが足かせになりつつある。LINEヤフーの買収価格を大きく膨らませかねない、異例の取り決めの中身とは。(ダイヤモンド編集部編集長 名古屋和希)

「食べログ」のカカクコム争奪戦が過熱
LINEヤフーが再び買収価格を上積みも…

 レストラン検索・予約サービス「食べログ」を運営するカカクコムを巡る、欧州系投資ファンドのEQTと、LINEヤフー・米投資ファンド、ベインキャピタル陣営の買収合戦が過熱している。

 カカクコム争奪戦では、EQTが5月にTOB(株式公開買い付け)の実施を公表し、カカクコムはEQTによるTOBに賛同を表明。それに対し、LINEヤフー陣営は即座に対抗提案を出し、その後、両陣営によるTOB価格の引き上げの応酬が続いた。

 LINEヤフー陣営は7月29日、1株当たり3520円とし、カカクコムの大株主であるKDDIの協力が得られた場合は1株3640円まで引き上げると表明した。

 EQTが8月に1株3570円とする価格引き上げを表明したものの、LINEヤフー陣営は価格の引き上げを見送った。これを受け、カカクコムの大株主で、LINEヤフー陣営と応募契約を結んでいた香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントはLINEヤフー陣営との応募契約を解消。EQTに対し、LINEヤフー陣営が示した1株3640円を下回るTOBは支持しないと明かした。EQTは9月10日、1株3680円に価格を引き上げた。

 一方、一度は価格引き上げを見送ったLINEヤフーは9月16日、再び価格を引き上げると発表した。従来の価格は、1株当たり3520円、KDDIの協力が得られた場合は1株3640円だったが、それぞれ、3597円、3720円まで上積みした。

 ただし、今回のLINEヤフーの引き上げ幅には苦境がにじむ。既にEQTと合意しているKDDIの協力を得るには、LINEヤフー陣営は少なくともEQTのTOB価格を2%以上上回る価格でTOBを実施する必要があり、LINEヤフー陣営は最低でも1株3754円以上としなければならない。

「2%以上」はEQTと既に合意しているKDDIが合意解除できる条件として定められている。その条件を満たす対抗提案が出てきて初めてKDDIは、対抗提案者との協議や対抗提案へ応募できるようになる。これまで、LINEヤフー陣営はその条件の存在を踏まえ、EQTのTOB価格を2%以上上回る価格を提示してきた。今回は、KDDIの協力を得るために最低限必要な3754円を下回る価格を初めて出した格好となる。

 カカクコムの20%強を保有する大株主のデジタルガレージはEQTのTOBを支持し、非公開化後も再出資して株主として残ると表明している。デジタルガレージがEQTの提案を支持している中、LINEヤフー陣営がカカクコムの非公開化を目指すには、カカクコム株の17%強を持つKDDIの協力を取り付ける必要があるが、現状では、KDDIの協力を得るのは困難な状況になっている。

 争奪戦が激化する中、LINEヤフーにとって、共同買収を目指すベインキャピタルと結んだ“片務的”ともいえる取り決めが足かせになりかねなくなっている。『LINEヤフーが画策するカカクコム“横やり買収”の手法が判明!法令に触れかねない「グレーなスキーム」とは…一休と食べログなど複数サービスがバッティング』で報じた、異例の買収スキームも相まって買収価格が大きく膨らみかねないのだ。

 次ページでは、LINEヤフーを苦境に追い込みかねない取り決めの中身に加え、買収負担が実際にどれだけ重くなるリスクがあるのかを解説していく。