化学サバイバル#31Photo by Tohru Sasaki

化学最大手、三菱ケミカルグループの大胆な構造改革がほぼ一巡した。製薬子会社だった田辺三菱製薬(現田辺ファーマ)の売却をはじめ、石油化学や製鉄用コークスなどの基礎素材でも事業の整理・再編を断行し、2026年度からは「攻め」に転じる。だが、市場の評価は厳しい。特集『化学サバイバル!』の本稿では、筑本学社長に構造改革後の今後の戦略に加え、石化再編の行方、産業ガス子会社の日本酸素ホールディングスとの「親子逆転問題」などを直撃した。半導体材料のJSRの買収についても意欲をにじませた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 金山隆一)

石化分社化の狙いは“再編”
京葉連合と鹿島の合流は?

――同郷の綾瀬はるかさんを起用したCMが話題になっています。

 同じ広島県出身なのは偶然です。三菱ケミカルグループはいろいろな会社が一緒になってできた会社で、それぞれに文化や歴史があります。何とかそれを一つにして、同じ方向を向かせたい。みんなが一つになると力が出ますから。テレビCMは三菱ケミカルとして初めてではないでしょうか。今回のCMが「攻めに出るためののろしではないか」などと言われますが、その通りです。前から考えていました。

――田辺三菱製薬(現田辺ファーマ)の売却や石油化学事業の整理・再編などで構造改革はほぼ一巡しました。2年前、ダイヤモンド編集部のインタビューに対して、石油化学コンビナートの再編に向けて「東日本と西日本でそれぞれプラットフォームをつくった方がいい」と話していました(『三菱ケミカルの新トップが石油化学事業で「もう一段再編はある」と断言!田辺三菱の売却候補とは』参照)。

 中国や中東、韓国では大型の石化製造設備が当たり前です。一方、日本は60~70年前の勃興期につくった設備を使い続けている。設備そのものの競争力が圧倒的に違います。三菱ケミカルの水島(岡山県)の設備も小さく、定期修理やメンテナンスにコストがかかります。

 日本も大型化、最新鋭化して、生産効率を上げ、コストとCO2(二酸化炭素)排出量を下げる必要があります。大きな設備に皆で相乗りする。その上で各社が得意なことをやる。石油化学は日本の産業のプラットフォームですので、そういう対応を進めないと日本全体の国力が落ちてしまいます。

――三井化学の橋本修会長は、会社同士の統合は難しくても、石化事業を分社化した上で経営統合することは可能ではないかとの考えを示していました。三菱ケミカルと三井化学の石化会社が一つになることもあり得ますか。

 世界的に見ると日本の会社は規模が小さい。どんどん一緒になって大きくなっていったらいいと思います。

――東日本では、三井化学などを含む京葉地区の設備を核にした再編論があります。一方、三菱ケミカルは鹿島地区に設備があります。分社化する鹿島地区の石化事業と京葉側を統合する可能性はありますか。

京葉地区のコンビナートでは、2026~27年に丸善石油化学と出光興産がエチレンプラントを停止し、4基から2基への集約が進む。そこに、鹿島の三菱ケミカルが加わる「東日本石化大再編」はあり得るのか。筑本氏にぶつけると、踏み込んだ答えが返ってきた。さらに次ページでは、構造改革後の稼ぎ頭、JSR買収、日本酸素ホールディングスとの「親子逆転」という難題にも切り込む。