ADHD(注意欠如多動症)の当事者で、ASD(自閉スペクトラム症)とADHDの2人の娘さんをもつなちゅ。さん。新刊『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』では、子どもから大人まで一生使える具体的な対応策を伝えている。今回のテーマは、清潔感。不潔ではないのに、なぜだらしなく見えてしまうのか。著者に話を聞いた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局、イラスト/武者小路晶子)

「不清潔感」という、やっかいな状態
――不潔なわけではないのに、なんとなくだらしなく見える。そういうことがあります。
なちゅ。:私はこの状態を「不清潔感」と呼んでいます。実際に不清潔かどうかは関係なく、あくまで「感」なんですけど、ちょっと気を抜くと、この状態になりがちなんですよ。
そして、その正体はだいたい4つに絞れます。服のシワ・毛玉・テカリ・色あせ。この4つの対策をすることが、清潔感を演出する最終防衛ラインです。
――逆に言えば、この4つさえ防げばいい。
なちゅ。:そうです。逆に、ここを放置したまま、メイクや服のセンスを磨いても効きません。土台のほうが先なので。
手入れをやめて、素材で防ぐ
――とはいえ、こまめに手入れをするのは続かなそうです。
なちゅ。:しんどいですよね。ハードルが高いことを続けるのは無理だと、私はもう諦めています。
だったらもう、最初から、シワ・毛玉・テカリ・色あせが出づらい素材の服を選ぶ。具体的には、化繊(ポリエステル・ナイロン)入りの素材に、濃い色。黒、紺、チャコールですね。
そして、毎シーズン着つぶして、シーズン終わりに捨てる。化繊が苦手な人は、インナーだけ綿にすればいいです。見えないところは、劣化してもバレない。バレない!
――手入れではなく、買い方と捨て方で解決すると。
なちゅ。:これが最短の「不清潔感」対策だと思っています。
かつては、いい服を丁寧に管理することがよしとされていましたよね。でもファストファッションが出てきたことで、安いものを短いローテーションでガンガン使い倒していくことができるようになった。その現代システムに、全力で乗っかるわけです。
「洗っているか」ではなく「管理できているか」で見られている
――そもそも、なぜ服の劣化がそこまで響くのでしょう。
なちゅ。:「不清潔感」は、対人関係に地味に効いてくるんです。
服が劣化していると、「管理ができていない=だらしない人」と、無意識に自動判断されがちなんですね。「実際にだらしないか」とは、関係ないんです。
つまり、洗っているかどうかを見られているのではなくて、管理できているかどうかを見られている。ここがズレていると、いくら洗っても報われません。
――自分では気づけるものでしょうか。
なちゅ。:それが、やっかいなところで。同じ服を繰り返し着ていると、じわじわ進む「劣化」に自分で気づけないんですよ。
少しずつヘタっていくから、変化が見えない。気づいたら全体がくたびれていた、となりがちです。
だからこそ、劣化に気づく・気づかないという観察そのものを放棄して、シーズンが終わったらさっさと捨てる。これなら劣化した服を着続けることがないし、シーズンオフの服を管理する手間もまるごと消えて、一石二鳥です。
スマホケースやメガネのレンズにも注意
――服のほかに、気をつけるべきものはありますか。
なちゅ。:この「自分では気づきにくい」状況は、服以外にも潜んでいます。
たとえば、黄ばんだスマホケースや、曇って汚れたメガネのレンズ。他人の目に留まりやすいのに、自分では気づきにくい筆頭です。いつのまにか汚れるのに、本人には見えないし、定期的に洗ったりするものでもない。
――どう対処していますか。
なちゅ。:メガネのレンズについては、「メガネ拭きトリガー」というルールを作って解決しています。
派手なデザインのメガネ拭きを、自分の動線の「必ず目に入る場所」に置くんです。いつも座る食卓やデスクですね。そして、「メガネ拭きが意識に入ったら、レンズを拭く」と決めておく。
私たちの扱いづらい特性のひとつに、あらゆるものが景色と同化する、というものがあります。せめてもの抵抗策として、お気に入りのかわいくて目につく派手なデザインのものを選んで、意識に留めやすくするわけです。
なちゅ。
1980年生まれのワーキングマザー。発達障害(ADHD:注意欠如多動症)当事者。中学生と高校生の娘、そして夫も発達障害の特性を強く持つ。長女の発達障害診断をきっかけに、発達障害やそれに関連する分野の独学を開始。以来15年以上、自らの発達障害や子育てについてXを中心に情報発信を行う。仕事でも、障害福祉分野でマネジメント担当をしながら、個人事業主として講師業やスタートアップのサポートに従事。なかでも、自身の経験を活かした発達障害の親子のケアに力を入れている。
[医療監修]
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
医師・信州大学医学部教授
1988年東京大学医学部卒。医学博士。専門は発達精神医学。信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 教授。信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部 部長。長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」センター長。









