ネットで発達障害の特徴を見て「自分もそうだ」と直結させる自己診断は危ういものです。発達障害は病気ではなく「脳の性質の偏り」であり、境界線が曖昧なため専門医でも判断が分かれます。基準を満たすかの総合的な判断は医師にしかできません。ネット情報は目安に留め、生きづらさや困りごとがある場合は自己判断せず、信頼できる専門医を受診して適切なサポートを受けましょう。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・斎藤順)

【精神科医が警告】「私って発達障害かも」ネットの情報を鵜呑みにして自己診断するキケンな罠Photo: Adobe Stock

ネットにあふれる発達障害の情報と「自己診断」の危うさ

最近、インターネットやSNS、動画サイトなどで「発達障害(ADHDやASD)」に関するトピックを頻繁に見かけるようになりました。それぞれの特徴を分かりやすく紹介しているコンテンツがたくさんあります。

これらの中には非常に正しく参考になるものもあれば、少し疑問が残るようなものまで、まさに「玉石混交」の状態です。

こうした情報を通じて自分の特性を知ることは決して悪いことではありません。しかし、精神科医としてどうしても皆さんに誤解してほしくない大切なポイントがあります。それは、「紹介されている特徴が自分に当てはまるからといって、すぐに『私は発達障害だ』と直結させてはいけない」ということです。

専門家でも判断が分かれる「曖昧さ」とグレーゾーン

そもそも発達障害の診断は、非常にデリケートで境界線が曖昧なところがあります。明確な基準は存在するものの、実際の医療現場における運用のされ方は、はっきりと一刀両断できるものではありません

さらに、ここに「グレーゾーン」という概念が入ってくると、その定義はますます曖昧になります。そのため、「どこからを発達障害と呼ぶか」は専門家の間でも意見が分かれるほど難しい問題なのです。実際、次のようなケースは珍しくありません。

● 診断を求めて受診したものの、ある病院では「何ともないから大丈夫」と言われる
● 別の病院では「グレーゾーンかもしれない」とアドバイスを受ける
● また違う病院では、はっきりと診断されてADHDの治療薬を提案される

「誰が正しくて誰が間違っているのか」を説明するのは非常に困難です。現実問題として、最終的な判断は主治医の臨床的な診立てに委ねられている部分が大きいのです。

発達障害は「病気」ではなく「脳の性質」

なぜこれほど診断が難しいのかというと、発達障害はうつ病や統合失調症、双極性障害(躁うつ病)といった一般的な「精神疾患(病気)」とは本質的に異なり、「脳の性質(特性)の偏り」だからです。

英語の「Disorder」を日本語で「障害」と翻訳してしまったために誤解を招きやすいのですが、ニュアンスとしては少し異なります。あくまで「脳の性質の偏りによって日常生活に支障が出ている人」を、医療的にサポートするための枠組みが「発達障害」という概念なのです。

ネットの情報は「目安」に留め、困った時は専門医へ

多くの動画やサイトでは、「こういう特徴があれば発達障害かもしれません」と、割と短絡的に書かれている傾向があります。専門家による厳密な診断がいかに難しいかという背景まで丁寧に解説しているメディアは、決して多くありません。

ネット上の情報は、あくまでも「一つの目安」として受け止めてください。医学的な診断基準を満たしているかどうかを専門知識に基づいて総合的に判断できるのは、医師だけです。ネットの情報を見て「自分もそうかもしれない」と不安になったり、実際に日常生活や仕事で生きづらさを感じて困ったりしているのであれば、決して自己判断で完結させず、まずは信頼できる専門医を受診してください。正しい診断と適切なサポートを受けるためにも、情報との間にはしっかりと一線を引いておくことが何よりも大切です。