アジアの工場で生産されるHBMチップは最先端AIモデルの学習に欠かせないアジアの工場で生産されるHBMチップは最先端AIモデルの学習に欠かせない
PHOTO: JEAN CHUNG FOR WSJ

 米国はメモリーチップを巡る難題に直面している。

 人工知能(AI)に不可欠で価格が急騰しているメモリーチップの国内製造拠点が不足していることから、トランプ政権は新たな生産能力への投資を促すため、輸入品に対する関税を準備している。

 だが、そうした措置を取れば、アジアの工場で生産されたメモリーチップを購入している米国のテック大手や家電メーカーなどのコストを押し上げる可能性がある。こうした工場は韓国の サムスン電子 や SKハイニックス 、米 マイクロン・テクノロジー が運営している。これらメモリーメーカーの幹部は、メモリーチップ不足は今後12カ月から数年は続く可能性が高いとの見方を示している。

 AIの構築には、データセンター内の膨大な量のストレージに加え、AIモデルの学習に必要な演算を支える高機能メモリーが必要になる。台湾の市場調査会社トレンドフォースによると、フラッシュストレージの価格は年内に2025年半ば時点の4倍となる見込みで、サーバー向けメモリーの価格は6倍超に達する勢いだという。

 米国内には現在、バージニア州に商用メモリー生産施設が1カ所あり、マイクロンが運営している。そこでは自動車、航空宇宙、防衛、産業向けに旧世代の製品が大量生産されている。

 米ジョージタウン大学安全保障・新興技術センター(CSET)のシニアリサーチアナリストであるハンナ・ドーメン氏は、外国製のメモリーチップに大きく依存することで、米国は供給の混乱に見舞われやすくなると指摘。供給が混乱すれば、ビジネスや防衛にとって脅威となり、AI分野で不可欠な技術における優位性が脅かされる恐れがあると述べた。

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のローリン・ウィリアムズ氏は、世界的なAI分野の競争、特に中国との競争で、米国の支配的な地位を維持することがトランプ政権の広範な目標の一つだと語った。

 ウィリアムズ氏は「国内での半導体生産拡大は、そうした考え方と合致している」と話した。

 米商務省が特定の輸入半導体を対象に国家安全保障に関する調査を行い、その結果として今年1月に関税が導入されたが、家電やデータセンターに使われる半導体は、適用除外が認められた。米政府が関税の適用拡大に向けて準備を進める中、ハワード・ラトニック商務長官は、米国内での生産のために投資する外国企業はこうした関税の適用が猶予される可能性を示唆している。

 米国でのメモリー生産能力を向上させる取り組みはバイデン政権時代に始まったが、施設の完成には何年もかかるため、世界的な供給不足は当面、緩和されそうにない。