「もっとわかりやすく話そう」「言語化力を鍛えよう」。そんな言葉をよく聞くようになりました。しかし、私たちは言葉だけでコミュニケーションしているわけではありません。むしろ、「話す」以前にやっていることがあります。それが、「見る」ことです。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

言語化の時代。「話し方」よりも超大事なこととは?

人間は「見ただけ」で意味を読み取っている

 私たちは普段、目に入ってくるものから大量の情報を受け取っています。

人間には「見たものからメッセージを読み取る」という特徴があります。
私たちは何かを見たとき、そこにメッセージや意味を勝手に見出しているのです。
たとえば、外に出たとき、空を見上げて、黒い雲がモクモクと広がっていたとします。
私たちはそれを見て「雨が降りそうだ」というメッセージを読み取ることができます。
別に雲は私たちに「そろそろ雨を降らせますよ」と伝えるためにモクモクしているわけではありません。
人間が黒い雲を見て、勝手に「雨が降りそうだ」と思っているだけなのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 黒い雲は、一言もしゃべっていません。
 それでも私たちは、「傘を持っていこう」「早く帰ろう」と判断できます。

 つまり人間は、言葉になっていないものからも、意味を読み取る能力を持っているのです。

顔を見ればわかる

 これは、人間同士でも同じです。

同じように、人は誰かと会っているときも、相手の見た目や振る舞いから、自然と意味やメッセージを読み取っていきます。
新人に業務内容を教えた人が、新人の表情や態度を見て、「わかってない」と読み取る。
これは逆の立場から考えれば、言葉を使わなくても、顔や体の動きだけで何かを伝えることができるということです。そして実際に多くの人が、うなずいたり、眉を寄せたりして、感情をあらわしています。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 たとえば、新人に仕事を説明したあと、

「わかりました!」

 と言われたとします。
 言葉だけを受け取れば、「理解したんだな」で終わります。
 でも、相手が不安そうな顔をしていたら、

「本当に大丈夫?」

 と聞き返したくなる。

 逆に、こちらが話しているとき、相手が何度もうなずいてくれれば、「伝わっているな」と安心できます。
 言葉以外でも、会話はずっと続いているのです。

「話す」だけがコミュニケーションではない

言葉以外にも、こんなふうに、相手に何かを伝えられる手段があるのです。
あまりにも当たり前のことだと思うかもしれません。
でも、これが言葉以外のコミュニケーション手段の基本中の基本です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 コミュニケーションというと、私たちはすぐ「話し方」を考えます。

 どう説明するか。
 どんな言葉を選ぶか。
 どう言語化するか。
 もちろん、それらも大切です。

 でも、その前にやるべきことがあります。
 相手を見ることです。
 相手はどんな表情をしているか。退屈そうなのか。納得しているのか。困っているのか。

 それを見れば、「もっと説明したほうがいい」「ここはもう説明しなくていい」と判断できます。

「話し方」よりも「見る力」

 言語化の時代だからこそ、言葉だけに意識を向けるのは危険です。
 話すことに夢中になるほど、目の前の相手が見えなくなるからです。

 大切なのは、一方的に「うまく話す」ことではありません。

 話しながら相手を見て、相手から返ってくる言葉にならないメッセージを受け取ること。
 そして、それに応じて話し方を変えることです。

 コミュニケーションがうまい人は、よくしゃべる人ではありません。
 よく「見ている人」なのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。