東証プライム上場社長で『「悩まない人」の考え方』などベストセラー著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人』だ。
この本の著者・森武司氏は、お笑い芸人からニートを経て起業。11事業で年商146億円、18年連続増収増益の会社をつくり上げた。本書に共感した株式会社アドバンスの品川瑞樹社長は、普段は相手のキャリア相談に乗り、自社への入社を強く勧めることはしないという。だがある食事の席で、「覚悟がないならそのままでいい」と、あえて相手を突き放した。品川氏にその理由と本書の教訓を聞いてみた。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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「わかっているけど、一歩踏み出せない」
――やりたいことがあるのに動けない。そういう部下や後輩を前にして、どう声をかけるべきか悩む人は多いと思います。
品川瑞樹(以下、品川):うちの社員の友人で、以前からキャリアの相談に乗っていた方がいたんですが、その方がまさにそういう状態でした。
食事の席で、その人のやりたいことや夢を聞いて、「もしそれを実現するなら、うちという選択肢もあるよ」という話はしていました。
――反応はどうだったんですか。
品川:「わかっているけど、一歩踏み出せないんだよね」と。私が何を言っても、そこから動かない感じでした。
「それなら、うちじゃなくてもいい」
――そこで、どう伝えたんでしょうか。
品川:「だったら別にうちじゃなくても、今のところは辞めるべきなんじゃない」と。
やるかやらないかは本当に自分次第だし、自分で決めることだから、と伝えました。
「結局、最後に決断するのは自分なんだよ」と話したうえで、「今こうやって話をしているけど、それでも決断できないんだね」と、少し笑いながら言ったんです。
「覚悟があるなら一緒にやろうよ。覚悟が持てないなら、そのままでいいんじゃない」と。
――かなり突き放した言い方ですね。
品川:正直、これを常套手段としてやっているわけではありません。普段の私は逆で、「うちに来てほしい」とはまず言わないんです。相手の幸せがどこにあるかを一緒に考え、決めるのは向こうに任せる。ただ、その方に対しては、最後に少し詰めました。
――なぜ、その人にはそうしたんですか。
品川:本人の中で答えがもう出ていたからです。やりたいことも、今の場所では叶わないことも、全部わかっている。足りないのは情報でも選択肢でもなくて、決めることだけだった。そこに優しい言葉をかけても、たぶん何も変わらないと思ったんです。
背中を押したのではなく、逃げ道をなくした
――それを言われた相手は、どうなったんでしょうか。
品川:非常に刺さったみたいで、その場で「そうだよな、やります。今から上席に連絡します」と言って、本当にその場で連絡していました。食事をしている最中にですよ。
――背中を押されるのを待っていた、ということでしょうか。
品川:そうかもしれません。ただ、押したというよりは、逃げ道をなくしただけだと思っています。「できない」と言ったままでいられる状態を、そこで終わらせただけで。決めたのは本人です。
優しくするのが親切とは限らない
――同じことを部下や後輩に言うのは、なかなか勇気が要りそうです。
品川:私も毎回やるわけではありません。ただ、相手が本当は答えを持っているのに動けずにいるとき、話を聞いて共感するだけで終わらせるのは、実は不親切なこともあると思っています。その人の時間を止めてしまうので。
――今回の話を聞くと、単に自社へ誘うというより、相手が決断するまでかなり時間をかけて向き合っていますね。本にも、仲間を集めるためにそこまで手間をかけるのか、というエピソードがあります。
品川:著者の森社長には、一人の役員候補を迎え入れるために、役員全員で露天風呂に誘って裸で語り合った、という話が出てきます。
一人のために、そこまで手間をかけているんですよね。採用って、条件を提示して口説くことだけじゃないんです。その人が何をしたいのかを聞いて、ときには本人が決断するところまで向き合う。そこまでやる価値がある、ということだと思います。人を口説けずに悩んでいる方には、参考になる一冊だと思います。




