未来のAIパンデミック、AIで撃退する新興企業レッド・クイーン・バイオは、候補となる抗体を生産・試験するために細胞を培養している

 米人工知能(AI)開発企業オープンAIの事務所に近いワインバーで、バイオテクノロジー起業家のハンヌ・ラヤニエミ氏(48)とニコライ・エロシェンコ氏(40)は、不安と興奮が入り交じった気持ちでいた。

 AIの急速な進歩により、テロリストやならず者国家が致死性の高い新たな生物兵器を開発することが可能になる恐れがあった。2人はアイデアを出し合い、後にオープンAIに提案することになる構想をまとめた。それは、AIによって生み出された生物兵器に対する治療法をAIを用いて開発し、その過程で他の病気の被害も解決しようというものだった。

 現在、レッド・クイーン・バイオと呼ばれる彼らのAIバイオセキュリティー(病原体や生物毒などの管理・防御)新興企業は、AIが設計したウイルスというSFのような脅威を含め、多様な潜在的病原体から人々を守るため、製造可能な抗体の設計を急いでいる。オープンAIが主要投資家である同社は、3600万ドル(約57億円)を調達したと述べている。来年には、鳥インフルエンザやその他のインフルエンザ属のウイルスに対する同社の抗体医薬のヒト臨床試験が計画されている。

 AIの能力が向上し、不正なAIシステムによるインシデント(事案)が多発するにつれて、AIが文明を破壊しかねないという懸念が高まっている。これまでのところ、提案されている対応策の多くは、AI研究の減速、基準の設定、AIモデルがそもそも危険な問い合わせに応答しないようにブロックするなど、リスクを回避することに重点を置いている。レッド・クイーン・バイオは、これらの保護策が失敗した場合、社会は備えるべきだという前提で活動している。

 ラヤニエミ氏は2025年の会議で生まれたアイデアについて、「私たちは前向きなことが起こるようにしたい」と語った。「それは、文明を破壊してしまっては手に入らない」